著者のコラム一覧
菅野徳雄ゴルフジャーナリスト

1938年生まれ。岩手県出身。立教大卒。1964年からゴルフ雑誌の編集にたずさわり、中村寅吉をはじめ、河野高明、安田春雄、杉本英世、尾崎将司など、数多くのトッププレーヤーを取材。わかりやすい技術論と辛口の評論で知られる。「ゴルフ・トッププロのここを学べ」「ゴルフスウィングの決め手」「即習ゴルフ上達塾」などの著書がある。

JGAが選手会の提案を受け入れコースを優しく…だから日本では世界で勝てる選手が育たない

公開日: 更新日:

 ゴルフは人間が相手ではなくゴルフコースとの戦いである。だからタフなコースで試合を開催しないと強い選手は育たない。当然のことである。

 AON(青木功尾崎将司、中嶋常幸)が三つ巴の激戦を繰り広げていた頃はコースセッティングはタフだった。ラフに入れるとくるぶしまですっぽり埋まるような深さがあった。だから、ジャンボのパワーを持ってしてもティーショットを深いラフに入れるとサンドウエッジでフェアウエーにいったん出さなければならない状況も多かった。

 ところが、AONの時代が終わると、わが国で最もタフな設定と知られた日本オープンですらラフがだんだん短くなり、ラフからでもグリーンを狙えるようになった。AONはラフに入れてもパワーでグリーンの近くまでボールを持っていったが、そういうことができる選手がいなくなったのでラフを短くしたのだろうか? と思ったこともある。

「見ていても面白くないと思う」

 2013年に池田勇太が選手会長になったときに記者会見でそのことを聞くと、「ティーショットをどれだけ曲げたかによっても違ってくるけど、セカンドカットでサンドウエッジでただ出すだけでは(観客も)見ていても面白くないと思う」と真顔で言った。

「ラフにすっぽりボールが沈んでいて、はじめからあきらめてサンドウエッジで横に出すのではなく、グリーンに向かってどれだけ打てるかを考えさせるほうが見ていても面白いと思う」

 池田はこう言い、選手会長になって2年目の14年日本オープン(千葉CC梅郷C)で優勝している。池田は15年までの3年間選手会長をつとめ、17年の日本オープン(岐阜関CC)でも勝った。選手会長になって日本オープンのコースセッティングの仕方を変えるように提案し、2度も優勝しているのだ。

世界に通用する選手が育たない

 選手会の提言ということは言い換えれば選手会の総意なのだろうか。日本オープンの主催は日本ゴルフ界の総本山といってもよい日本ゴルフ協会(JGA)であるわけだが、選手会の意見を簡単に受け入れてラフを短くしていたら世界で勝てる強い選手を育てることはできない。

 私は1981年から20年間、全米オープンの取材を続けた。81年は青木功が帝王ジャック・ニクラスと死闘を演じ、惜しくも2位になった翌年だ。

 では、全米オープンのコースセッティングはどうかというと、日本よりもはるかにタフだ。

 このところ日本で行われる地区予選を勝ち抜いて全米オープンの出場権を手にしても、みんな力及ばず予選落ちして帰ってくる。一番の理想は日本から行ってすぐに全米オープンで優勝を争えるような選手を国内で育てることだ。それにはもっと厳しいコースセッティングで、それも日本オープンだけでなく多くの試合で取り組まないといけない。

 選手を甘やかしたら世界で勝てる選手は育たない。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  2. 2

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  3. 3

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  4. 4

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  5. 5

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  1. 6

    国分太一問題で日テレの「城島&松岡に謝罪」に関係者が抱いた“違和感”

  2. 7

    今度は横山裕が全治2カ月のケガ…元TOKIO松岡昌宏も指摘「テレビ局こそコンプラ違反の温床」という闇の深度

  3. 8

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    大谷翔平のWBC二刀流実現は絶望的か…侍J首脳陣が恐れる過保護なドジャースからの「ホットライン」