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春日良一五輪アナリスト

長野県出身。上智大学哲学科卒。1978年に日本体育協会に入る。89年に新生JOCに移り、IOC渉外担当に。90年長野五輪招致委員会に出向、招致活動に関わる。95年にJOCを退職。スポーツコンサルティング会社を設立し、代表に。98年から五輪批評「スポーツ思考」(メルマガ)を主筆。https://genkina-atelier.com/sp/

世界アンチドーピング機関巻き込み米中の争いが表面化する…いまだくすぶる東京五輪の火種

公開日: 更新日:

 WADAは、ドーピング防止と撲滅のために、国際的反ドーピング綱領の実施と順守を監視すべく1999年に設立された。スポーツ大会が巨大化し、それまで国際オリンピック委員会の医事委員会を中心に進めてきた反ドーピング活動だけでは管理できない状況になったため、国連の協力と各国政府の参加を得て成立した。つまり、政府を前提としない限りWADAは存立しない。私はそこに機関の脆弱性を見る。ナショナリズムがはびこる余地があるからだ。

 今回の騒動の根に米中の戦いが見える。米国はWADAに年間約270万ドルを出す資金最大拠出国である。しかし中国も18年から拠出金をそれまでの2倍以上の約100万ドルにした。五輪における自国選手の活躍は政府にとって超重要だ。他国選手がドーピングによって自国選手に対し有利な戦いをするのを防ぐことが各国ドーピング機関の本音となる。

 今、中国の競泳選手は、直近の予選会で数々の注目すべき記録を出している。パリでの躍進が予想され、水泳王国・米国は自らの牙城を揺るがす存在になると警戒する。


 クリーンな選手を守る権威としてWADAは簡単に非を認めるわけにはいかず、5月17日に最高議決機関である創設理事会を緊急開催。創設会長ディック・パウンドが「USADAは問題解決の意志に欠けている」と凄みを利かせたが、22日に米国の超党派上院議員団がWADAに書簡を送り、真相究明への圧力をかけた。

 スポーツが世界に調和をもたらすのは、政治からの自律が絶対条件である。果たして政治を超えたフェアな証明ができるか? WADAは岐路に立つ。

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