すぐ隣の選手の声さえ搔き消す球場の大声援には、こう対処してきた
甲子園で勝つためには何をして、どう戦えばいいのかーー。横浜高校(神奈川)在任中に春夏通算16度の甲子園で3度の優勝に導いた元野球部長の小倉清一郎氏が本紙で連載した2011年7月の「鬼の遺言」から24年12月の「鬼の秘伝書」までの通算13年半、計400回を超える「鬼」シリーズの中から「甲子園での勝利」につながる回を厳選して再掲載する。
今回は【大声援の対処法】について。
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2023年夏に全国制覇した慶応(神奈川)の大応援団の声援はすさまじかった。横浜スタジアムで何度も戦っているから、大学仕込みの素晴らしい応援は知っている。それでも、想定を超える人数が駆け付けた決勝は、すぐ隣にいる選手の声が聞こえないほどの大音量だったという。
仙台育英(宮城)は五回の守備で、左中間に上がった飛球を中堅手と左翼手が交錯し、中堅手が落球。致命的な2点を追加された。選手は「声が全く聞こえなかった」と言った。実は甲子園ではよく起こることだ。
私が指導した横浜や山梨学院では「この辺りに打球が飛んだら誰が捕る」とあらかじめ細かく決めてから試合に臨んでいる。
なにせベンチからすぐ前のネクストバッターズサークルの選手への指示も聞こえないことがある。ランナーコーチから「ベンチを見ろ」というサインまでつくる。甲子園の声援対策は必須なのだ。