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武田薫スポーツライター

1950年、宮城県仙台市出身。74年に報知新聞社に入社し、野球、陸上、テニスを担当、85年からフリー。著書に「オリンピック全大会」「サーブ&ボレーはなぜ消えたのか」「マラソンと日本人」など。

大坂なおみは何を隠している?ドタバタに見えるコーチ交代は全米復活に向けた絶妙な戦略に違いない

公開日: 更新日:

 男子と比べ、女子テニスはよりメンタルがカギになるが、大坂はカナダ直前にコーチを代えた。セレナのコーチだったムラトグルーから、シフィオンテクのコーチだったトマシュ・ビクトロフスキと仮契約へ。この唐突な発表に、今度ばかりは意味があるように思う。

 前コーチは、大坂が苦手なクレーシーズンに、下部ツアー125に挑戦させる荒療治を施した。そこの優勝はさておき、コーチの狙いは先の全米だろう。クレーの長丁場、芝の不規則を戦い切ってメンタルパワーを蓄積すれば、本命のハードコートは楽になる……ギルバートがアガシ復活に向けた戦略と同じで、ムラトグルーの指導力だからこそできた。

 大坂はこれまで何度もコーチを代え、4度のメジャー優勝時のコーチはサーシャ・バイン、ウィム・フィセッテだった。彼女にとって、彼らの手腕より、インスピレーション=存在=刺激が重要だ。だから、セレナのコーチであり、シフィオンテクを世に出したビクトロフスキなのだ。ドタバタに見えるコーチ交代は、全米復活に向けた絶妙な戦略に違いない。

 全米の前哨戦にあたるカナダでは、ストロークの角度も精度も素晴らしかった。ただ、時速200キロのサーブは見せていない。本番の全米に備えて隠している? 勝った負けたより、そんな夢を抱かせるプロアスリートは、そうはいない。

 ♪世界中にナオミ、ナオミ、カムバック……。

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