「伝統」に隠された夏スポーツの矛盾…気候も社会の仕組みも変わったのに“形”だけそのままだ
すごく暑い。折からの参院選では「負担増」などと言われ、高齢者につらい夏である。
そんな中、高校野球の地方大会が始まり、陸上競技の日本選手権も行われた。夏の高校野球は今年が第107回、日本選手権は第109回。高校野球をはじめ陸上競技、テニスなどの大会は昔から暑い中で行われてきたーー伝統である。
秋田県鹿角市を中心に展開される十和田八幡平駅伝競走全国大会(十八駅伝)は今年で第78回になる。一貫して8月7日に開催され(今年から8月第1土曜)、十和田湖を起点に田園地帯を走る駅伝は逃げ場がない。あまりの暑さにコース脇の水田に頭から飛び込んだ選手がいた。福島が生んだ奇才、宍戸英顕だ。
箱根駅伝の名物解説者・碓井哲雄さんは4年前の夏に亡くなった。
「なんでか知らねえけどよ、いきなり、入れられたんだ」
入院先からの電話。ちゃきちゃきの江戸っ子の最後の言葉だった。「屋内熱中症」だったのではないか。家では何もしない典型的“昭和男子”で、奥さんがいないと電灯もつけられないと言っていた。コロナ禍で外出が制限され、水も飲まなかった……箱根の給水に腹を立てた頑固者だった。