「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した
10月11日に児玉さんと再び下交渉をしたが、進展はなし。というか、“没交渉”に近かった。児玉さんの「紙切れ発言」以降、俺は「もう児玉さんとは交渉したくない」と交渉を拒否。96~01年に球団代表だった伊藤修さんに「児玉さんにこんなことを言われたんです!」とチクったことがあった。すると、伊藤代表は「おまえ、そんなこと言ったんか!」と児玉さんを一喝。内心、「ざまあみろ」と思った。それ以降、伊藤さんが交渉役を担ってくれた。
伊藤代表は普段から選手とコミュニケーションを取り、親身になってくれるフロントのひとりだった。FA騒動前のあるシーズンオフ、突然、伊藤さんから連絡が来たことがあった。
「忙しいだろうから、もしよければそっちに行く。そこで下交渉しよう」
決まった日程は俺が名古屋のCBCテレビで番組に出演する日だった。収録前、伊藤さんがテレビ局に来ると、ロビーの長椅子に2人で並んで座り、「下交渉」がスタート。
「これくらいでどうだろう」
「あと2000万円くらいお願いしますよ」
「分かった。持ち帰って検討してみよう」
ガランとしたテレビ局のロビーで生々しいお金の話。20~30分間程度の会話だったが、誰もいない空間で伊藤さんと2人きりで話した時間は複雑な気持ちでいっぱいだった。


















