オープン戦での“ポカ”をきっかけに2000年はアップシューズで全打席に立つハメになった
2000年春。巨人とのオープン戦で宇都宮の球場に着いて自分のバッグを開けた俺は青ざめた。
スパイクをナゴヤドームのロッカールームに置き忘れてしまったのだ。
すぐさま、星野仙一監督のことが頭に浮かんだ。打撃投手からスパイクを借りようか、と思ったが、シューズに「P」マークが付いている。それが見つかったら、結局「おまえ、何考えとるんや」と怒られる。
そんなことを考えているうちに自分のバッティングの順番が回ってきてしまった。仕方なくアップシューズのままケージに入って打っていると、星野監督にソッコーでバレた。追い詰められた俺はとっさに言い訳した。
「ああ、これはちょっと……、今年はスパイクを履かずにこれでいこうと思っているんです」
完全な口から出まかせだったが、これが裏目に出た。試合では3安打。「新スタイル」をやめるにやめられなくなった。スパイクなしの打席は違和感しかなかった。俺は前さばきで打つタイプなのに、踏み出す前の左足がズルッと滑ってタメがつくれない。左足をそーっと踏み込むようにしたら、かえってボールを長く見られるようになった。手元のギリギリまで引きつけ、「トーン」と当てるとそれがヒットになる。実は俺、天才なんだよ(笑)。


















