著者のコラム一覧
元川悦子サッカージャーナリスト

1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

2006年W杯本大会で王国ブラジル相手に超絶ゴール 玉田圭司氏が語る“大仕事を遂行する条件”

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玉田圭司さん(元日本代表FW/46歳)

 北中米W杯で史上初の8強以上を狙っている森保ジャパン。そのためには数多くの得点を奪うことが必要不可欠だ。98年フランスW杯・ジャマイカ戦の中山雅史(沼津CRO)以降、日本のW杯スコアラーは総勢18人。うち王国ブラジルからゴールを奪ったのは、2006年ドイツW杯の玉田ただ1人だ。JFA・Proライセンス受講中のレジェンドに森保ジャパンの印象やW杯の戦い方、現在の活動について聞いた。

  ◇  ◇  ◇

 ──2021年末に長崎で引退。昌平高の監督などを経て2025年から名古屋のコーチを務めています。

「今年から日本で20年間指導しているミシャ(ペトロヴィッチ)監督の下で指導に当たっていますが、『相手より点を取って勝つ』という意識は他のどのチームよりも強いと感じています。最前線の山岸祐也やシャドウの木村勇大らも点数を重ねていますし、躍動感のある戦いができている。自分もこれから監督を目指す中で、こういった流れを踏襲したいと考えています」

 ──同時にProライセンス講習会にも参加しています。

「はい。4月から本格的に始まって3週間講習を受け、また5月下旬から集合研修に参加しています。講義の中にはGKがどれだけ攻撃に関わっているかというテーマもあって、鈴木彩艶(パルマ)の動画を見ながら学ぶ機会もありましたけど、彼はパルマでの経験を日本代表に生かしているのかな、と。代表選手一人ひとりの意識の高さを感じますし、彼らがチームに還元しているものも大きいんでしょうね」

 ──2006年ドイツ.2010年南アフリカW杯に参加しましたが、当時よりも明らかに欧州組の選手が増えています。

「そうですね。個々のレベルアップは間違いないですね。ただ、過密日程の分、ケガ人も増えて南野君(拓実=モナコ)や三笘君(薫=ブライトン)が出られません。でも、彼らのサッカー人生はW杯が全てじゃない。もちろん4年に1回しかない世界大会ですし、僕自身もそこに賭けていたので彼らの気持ちはよく分かりますけど、ムリはしてほしくない。その分、他の選手たちがやってくれると思います」

 ──玉田さんは過去18人しかいないW杯スコアラーの1人ですが、どうしたらゴールという結果を残せるのでしょう?

「W杯は特別な舞台ですけど、僕は『国際試合のひとつ』くらいの感覚でやっていました。ドイツの時は公開練習が多くて、見に来るファンもいましたけど、今ほどインターネットも普及していなかったし、SNSもなかったので、盛り上がりはそこまでよく分からなかった。それに実際、ピッチに入れば22人しかいないので、平常心で臨んでいた。そういうメンタルでやることがひとつ重要でしょう。今は毎週、世界トップレベルの相手と試合をしたり、自チームで練習したりしているので、ひるむことは全くないはず。そのマインドの部分が僕らの代表時代とは一番大きな違いかなと思います」

森保さんはスポンジみたいな人

 ──ブラジル戦のゴールを振り返ってみると?

「自分で言うのも何だけど、試合中の順応力は僕の強みだったのかなと思いますね。あの時のブラジルはロナウドやロナウジーニョ、カカといったスーパースターが揃っていたチーム。それでも最初からスッと入れて『ここで足が出てくるんだ』『体をぶつけてくるんだ』と瞬時に察知し、対応できた気がします。その結果、前半34分に先制点を取れた。最終的には1-4で惨敗しましたけど、試合に戸惑うことなく入れたあの感覚は今でもよく覚えています」

 ──あの活躍なら、今の時代だったらすぐに欧州移籍していたでしょうね。

「そうかもしれません(笑)。でも当時の僕には正式なオファーはなかったですね。23歳で代表入りして、2006年が26歳、2010年は30歳だったから、年齢的にも少し遅かったかなという気がします。今、指導している名古屋には、一度海外に行って戻ってきた永井謙佑とか藤井陽也がいますけど、『海外に行きたいんだったらどんどん行った方がいい』と言いますね。チャレンジすればするほど可能性が広がっていく。自分はそういうチャンスには恵まれなかったけど、ブラジル戦のゴールはキャリアの1つの節目になったと思っています」

 ──指導者になって森保一監督のマネージメントはどう映ります?

「森保さんはスポンジみたいな人ですね(笑)。広島時代にミシャさんの下で攻撃的なスタイルを学んで、それを生かしながら自分の色を出して勝てるチーム作りましたし、代表でも今は名波浩さんや俊さん(中村俊輔)といった代表OBコーチを配置。『聞く耳』をしっかり持って意見を吸い上げてチームをマネージメントしています。それはなかなかできないこと。ひとつのスタイルとしてすごく参考になります」

 ──ともに代表で共闘したことのある中村俊輔、前田遼一、長谷部誠の3人のコーチへの期待は?

「いずれ彼らにW杯での経験を聞いてみたいですね。俊さんも南アの時には自分と一緒にサブ組で練習することが多くて、チームを支えていましたけど、そういう経験もプラスになるはずです。今回の北中米W杯は環境や移動を含めて非常に大変だと思いますけど、僕らが越えられなかったベスト16の壁を突破してほしい。僕も指導者の1人として日本代表の戦い方を興味深く見守りたいと思います」 

(聞き手=元川悦子/サッカージャーナリスト)

▽玉田圭司(たまだ・けいじ) 1980年4月11日生まれ。千葉・浦安市出身。習志野高で3年連続国体に出場。3年次に全国高校選手権出場。高校を卒業して柏入り。名古屋、C大阪、長崎でプレーして21年限りで引退。埼玉・昌平高の監督を経て25年から名古屋のコーチに就任した。04年に初代表。06年W杯ドイツ大会のブラジル戦のスーパーゴールで世界をアッと言わせた。

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