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元川悦子サッカージャーナリスト

1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

フローラン・ダバディ〈後編〉「史上最強」森保ジャパンへの楽観論に警鐘…期待が高かった06、14年との共通点

公開日: 更新日:

フローラン・ダバディさん(2002年日韓W杯 トルシエ監督通訳/ジャーナリスト)

「史上最強」の呼び声が高い森保ジャパン。南野拓実(モナコ)、三笘薫(ブライトン)、遠藤航(リバプール)というキープレーヤーの離脱はあったが、前回カタール大会の経験者も多く、未知なる8強入りを達成できる可能性は大いにあると期待されているが、その楽観論に警鐘を鳴らすのが、2002年日韓W杯でフィリップ・トルシエ監督のパーソナルアシスタント兼通訳を務めたフローラン・ダバディ氏だ。当時「バッドマン」で一世を風靡したDF宮本恒靖・現日本サッカー協会会長ら、かつての仲間たちにも注文を口にした。(【前編】からつづく)

  ◇  ◇  ◇

 ──今の日本代表を見渡すとJFAの宮本会長、日本代表の名波浩、齊藤俊秀、中村俊輔コーチなどトルシエ監督時代に日の丸を背負った面々が要職に就いています。

「世界基準を知る彼らが代表を支えているのは前向きなこと。最近、ブラジルやイングランドにも勝っていますし、期待値は高まっています。ただ、過去を振り返ると、フィリップが選んだ若手を成長させた2006年のジーコ(鹿島アドバイザー)さんのチーム、岡田武史さん(FC今治会長)が抜擢した若手をザックさん(アルベルト・ザッケローニ監督)が育てた2014年のチームは、期待が戦ったが(W杯本大会で)惨敗した。特に後者は、2012年のフランス戦で香川(真司=C大阪)のゴールで勝っているのにW杯では結果が出なかった。今回の森保さんのチームは、その2つのチームに似ているのが気になる。何の保証もない、というのを忘れてはいけないですね」

 ──オランダ、チュニジア、スウェーデンという対戦相手も脅威です。

「オランダが少し下り坂、スウェーデンが上り調子なんで、それぞれ1、3戦目でよかったと思います。オランダは日本とよく似たチーム。スーパースターはいないけど、協会全体が賢くスピーディーな組織ですね。相手はフィジカルが強いけど、日本の方が俊敏性や軽さのメリットはあります。屈強な肉体がいいのか、小柄で軽いのがいいのかというのは最近、自転車のツール・ド・フランスでよく議論になるんですが、この試合はそれを占う絶好の機会になると私は楽しみにしています」

 ──日本の1位通過の可能性は?

「もちろんあります。今季のパリ・サンジェルマン(PSG)を見ても分かる通り、ルイス・エンリケ監督が選んでいるのは走力があってハードワークできる選手ばかり。エムパぺ(レアル・マドリード)のようなスターは不在ですが、現代サッカーの最高レベルのチーム作りをしていると感じます。それは今の日本代表に通じるものがある。PSGは欧州CLを制しました。日本がW杯を勝ち抜くヒントにもなりますね」

 ──2002年と2026年の日本代表を比較すると?

「すごく近い、と私は考えています。チームの心臓であるボランチの田中碧(リーズ)は稲本潤一(川崎FRO)と似ているし、右WBの堂安律(フランクフルト)と当時の左WBの小野伸二(Jリーグ特任理事)もピッタリくる。膠着状態を打開できてメンタルの強い久保(建英=レアル・ソシエダ)と中田英寿は通じるものも多いし、最前線の高原直泰(沖縄SV=W杯本大会は欠場)と上田(綺世=フェイエノールト)、ウインガーの伊東純也(ゲンク)とアレックス(三都主アレサンドロ)も似たタイプ。国際経験や意識は進化しましたけど、日本のDNA自体はそんなに変わっていないんですよね。実は、課題も当時と共通している。全ての要素を備えた世界的9番(センターフォワード)がいるか、と言えばまだいない。GKの鈴木彩艶(パルマ)もいい選手だけど、世界トップではないですよね。センターラインのGK、CB、9番の3つは日本にはなかなかいない。それが出てくるのは奇跡に近いかもしれない。バイクで言うと、250ccの排気量が400ccになったけど、メーカーはホンダのままでBMWとかハーレーになったわけじゃないんですよね」

「最悪のシナリオも想定しておくこともすごく大事」

 ──その弱点をW杯で突かれないとも限らないと。

「そうですね。だからJFA会長のツネは、イザという時に明確な方向性を発信してほしいんです。やはり会長の一番の仕事は次の代表監督を選ぶこと。岡野(俊一郎=元会長)さんはフィリップを選んだし、川淵(三郎=相談役)さんはジーコさんや(イビチャ)オシムさんを選んだ。後から見れば、それしか残らないくらいですね(笑)。2026年W杯で日本代表が最高の結果を残せれば一番いいのですが、万が一の場合に最悪のシナリオも想定しておくこともすごく大事。そこは注文をつけたいところです」

 ──フランス代表も暗黒時代がありました。

「1986年の(ミシェル)プラティニと98年の(ジネディーヌ)ジダンの間は『谷間世代』と言われて90、94年と連続してW杯出場を逃しているんです。その時、ジャン・フルニエ会長がプラティニを代表監督に持ってきた。当時のプラティニは、今の中田ヒデのようにサッカーから離れていましたけど、彼が戻ることになってフランス人が希望を抱き始めたという事実はありました。彼が指導者ライセンスを持っていないということで、その後はエメ・ジャケ監督にバトンを渡し、育成システムを立て直して98年以降の黄金期につなげたわけですけど、そういう道を作り、メッセージを出すのが会長の役割。ツネには、明確なビジョンで人々を引っ張っていってほしいですね」

 ──最後に2026年W杯の森保ジャパンへの期待をお願いします。

「今の日本の実力を考えるとグループ敗退はないと思います。私はリーグ・アンの解説でモナコをよく見ていますけど、南野(拓実)のようなサッカーIQの高く、プレッシャーの中で的確な判断ができる選手が出てきたことをすごく嬉しく感じました。残念ながら彼は今回、出られないんですが、同じようにIQの高い選手はいますし、16強の壁を破れるだけの選手層はある。スーパースターに依存していないチームだからこそ、いろんな選手を使いながら戦っていけると思う。その考え方はフィリップのチームと同じ。そういう意味でも進化した日本代表が楽しみですね」

(聞き手=元川悦子/サッカージャーナリスト、絹見誠司/日刊ゲンダイ

▽フローラン・ダバディ 1974年11月1日生まれ、52歳。パリ市内の16区で育つ。高校を卒業してパリの国立東洋語文化学院の日本語学科に学び、静岡大に短期留学。同学院を卒業して98年に来日。映画雑誌「プレミア日本語版」の編集に携わる。99年から02年日韓W杯終了までトルシエ監督のパーソナル・アシスタントと通訳を務めた。その後はテレビのキャスター、ラジオ番組のナビゲーターなどを務めて他に執筆、講演など多方面で活躍中。フランスの文化、芸術、言語、ライフスタイルに深い知見を持ち、日仏の国際交流の懸け橋としての活動にも注力している。

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