「青い薬」フレデリック・ペータース著、原正人訳
<HIV感染者に恋した男の葛藤を描くBD>
スイス生まれの著者がHIVに感染した女性と恋して葛藤する男の姿を描いた自伝的BD(バンド・デシネ=フランス語圏マンガ)。タイトルの青い薬とは、感染者が一生飲み続けなければならない抗HIV薬のことだ。
主人公のフレッドは、19歳のときに友人の親が所有する別荘でその女性・カティと出会い、白いTシャツだけでプールに飛び込み、シャンパンを飲みながら「しかも洗練を失っていない」その存在に魅せられる。
数年後に会ったときには、彼女は結婚して1児の母となっていた。そして、再び時が経ち、友人宅のパーティーで再会した彼女と初めて親しく会話を交わしたフレッドは、カティが離婚したことを知る。その後、交際を始めた2人だが、ある日、彼女から病気のことを打ち明けられたフレッドは、頼もしい男を演じながらもうろたえてしまう。それでも、彼は立ち去ろうとするカティを引き留め、その夜、初めてベッドを共にする。
カティの3歳の息子も感染者だった。家族として生きていく覚悟を固めたフレッドだが、「潜在的な病人として」生きていかなければならない息子の人生を考えるとやるせなくなる。