「絶望の裁判所」瀬木比呂志著

公開日: 更新日:

■裁判員制度は陪審制度に移行すべし

 東京地裁の裁判官を経て最高裁にも調査官として勤務した著者。裁判所という組織が、いかに徹底した上意下達・中央集権的体質を貫いているかを批判的に紹介する。

 たとえば法務省が秘密裏に裁判所の判断を事前に問い合わせることなどは日常茶飯。また最高裁では、国家賠償請求事件にたずさわった裁判官の氏名と判決内容を一覧にした極秘資料を作成し、人事の参考に供するなども行っている可能性が高い。書きっぷりがあくまで法律家らしい慎重で持って回った言い回しなので、素人には一見わかりづらいのだが、よく読むと驚くような行政との癒着やなれ合いが横行しているのがわかるのだ。

 裁判員制度の導入は市民の直接参加で話題になったが、実はこの導入の陰には裁判所内の「刑事系」と「民事系」の対立があるらしい。近年弱体化が目立っていた「刑事系」が、裁判員制度の推進を機に息を吹き返し、最高裁長官をはじめ司法行政の重要ポストに刑事系が一気に返り咲いたという。著者は裁判員制度は、刑事裁判制度の改善という本来の目的のために陪審制度に移行すべきと主張している。
(講談社 760円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    早期・希望退職の募集人員は前年の3倍に急増…人材不足というけれど、余剰人員の肩叩きが始まっている

  2. 2

    永野芽郁&田中圭の“不倫LINE”はどこから流出したか? サイバーセキュリティーの専門家が分析

  3. 3

    ドジャース佐々木朗希「負傷者リスト入り」待ったなし…中5日登板やはり大失敗、投手コーチとの関係も微妙

  4. 4

    低迷する「べらぼう」は大河歴代ワースト圏内…日曜劇場「キャスター」失速でも数字が伸びないワケ

  5. 5

    巨人秋広↔ソフトBリチャード電撃トレードの舞台裏…“問題児交換”は巨人側から提案か

  1. 6

    田中圭が永野芽郁と密会していた“妻公認”の仕事部屋…警戒感緩むもバレやすい不倫の痕跡

  2. 7

    朝ドラ「あんぱん」教官役の瀧内公美には脱ぎまくった過去…今クールドラマ出演者たちのプチ情報

  3. 8

    TBSのGP帯連ドラ「キャスター」永野芽郁と「イグナイト」三山凌輝に“同時スキャンダル”の余波

  4. 9

    河合優実「あんぱん」でも“主役食い”!《リアル北島マヤ》《令和の山口百恵》が朝ドラヒロインになる日

  5. 10

    キンプリが「ディズニー公認の王子様」に大抜擢…分裂後も好調の理由は“完璧なシロ”だから