「家族は知らない真夜中の老人ホーム」川島徹著
「家族は知らない真夜中の老人ホーム」川島徹著
著者は60歳のとき、グループホームの夜勤の仕事を始め、以降10年間、8つの施設で働いてきた。
「助けてくれー」。ある夜、脳梗塞で車椅子生活の井上秀夫さんがトイレで叫んでいる。自分で後始末をしようとして床に倒れてしまったのだ。抱き起こそうとするが75キロの井上さんは重い。腰がギグッとなる。そんな最中、ナースコールが繰り返し鳴り、イラッ──。
タンスから衣服を引っ張り出す刑務所帰りの女性、認知症の女性に恋した元社長、「死にたいです」と言っていた84歳のフジ子さんなど多様な入居者を相手に奮闘。入居者の複雑な思いを知り、寄り添う一方、施設長による虐待に心を痛め、内部告発したことも。“中の人”だけが知る、老人ホームの本当の顔と、入居者人生最後の物語をつづる。 (祥伝社 1650円)