「昭和ディープ街トリップ、335カット」明里著

公開日: 更新日:

「昭和ディープ街トリップ、335カット」明里著

 今年は昭和だったら100年の節目の年。世の中からはどんどん昭和の面影が消えていく一方で、それを惜しみ懐かしさを感じる人や、知らずに育ったが昭和に魅力を感じる若い人々がいる。

 平成生まれの著者もそんなひとり。大学時代、コロナ禍の影響で閉業、解体される老舗や建物の存在を知り、「当たり前にあったものが、跡形もなくなくなってしまう。当たり前の風景を今、記録しないと」という思いに駆られ、生まれ育った千葉県の全市町村、さらに県外にも足を運びさまざまなものを記録してきた。

 本書は、今まで訪問してきたスポットの中から選りすぐりを紹介するビジュアルガイド。

 冒頭に紹介される大多喜町にある大屋旅館は、夷隅神社の隣にある門前宿で、江戸時代後期から続き現在10代目という老舗。1885(明治18)年ごろに建てられた木造建築に一歩踏み入れば、広々とした土間と帳場に出迎えられる。

 調度品も当時のままのものが多数残り、まさに旅籠の風情。かと思えば増築された風呂場は洋風で大正ロマンを感じられるという。

 ほかにも、創業370年以上という銚子の「大新旅館」など、まずは県内の古い旅館を巡る。

 以降、100年近く経っている木造の建物で千葉最古といわれていた勝浦市の銭湯「松の湯」などの銭湯や、現在は閉ざされてしまったが戦後の闇市を彷彿とさせる八街市の「銀栄アーケード」などの商店街、成田市のドライブイン「オートパーラーシオヤ」などで見つけたレトロな自販機、そして駄菓子屋や遊郭跡まで。さまざまなテーマで54スポットを335枚もの写真で紹介する。

 著者の強い故郷愛に感化され、きっとあなたも千葉に行きたくなるはず。 (303BOOKS 1870円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人エース戸郷翔征の不振を招いた“真犯人”の実名…評論家のOB元投手コーチがバッサリ

  2. 2

    「備蓄米ブーム」が完全終了…“進次郎効果”も消滅で、店頭では大量の在庫のお寒い現状

  3. 3

    小芝風花&森川葵はナゼ外れた? 来秋朝ドラ「ばけばけ」ヒロインを髙石あかりが射止めた舞台裏

  4. 4

    オレが立浪和義にコンプレックスを抱いた深層…現役時代は一度も食事したことがなかった

  5. 5

    参政党のあきれるデタラメのゴマカシ連発…本名公表のさや氏も改憲草案ではアウトだった

  1. 6

    阿部巨人が今オフFA補強で狙うは…“複数年蹴った”中日・柳裕也と、あのオンカジ選手

  2. 7

    さや氏の過去と素顔が次々と…音楽家の夫、同志の女優、参政党シンボルの“裏の顔”

  3. 8

    参政党さや氏にドロドロ略奪婚報道の洗礼…同じく芸能界出身の三原じゅん子議員と“お騒がせ”な共通点が

  4. 9

    ドジャース大谷翔平「絶対的な発言力」でMLB球宴どころかオリンピックまで変える勢い

  5. 10

    自民党を待ち受ける大混乱…石破首相は“針のムシロ”のはずが、SNSでは〈#やめるな〉が急拡大