『「イタリア郷土料理」美味紀行』中村浩子著
■パルチザンとボッリートの思い出
一口にイタリア料理といっても、クリームチーズ系のパスタしか食べない地方があるかと思えば逆にトマトソース系しか食べない所もあるという。本書はイタリアの各地を巡り、その土地に住む人々にそれぞれの郷土料理や思い出の味について聞く、食エッセー。トリノ生まれの文筆家・ロレンツォは、第2次世界大戦中に疎開した村でドイツ軍と戦うパルチザンの姿を間近に見た思い出と彼らが食べていた「茹で肉(ボッリート)」について語る。ミラノで代々続く高級婦人帽子店の店主兼デザイナーのラウラの思い出の味は忙しい母に代わって父親が作ってくれたリゾットだ。9都市20人の人生と味の思い出から豊かな食文化の神髄に迫る。
(小学館 819円)