「下中彌三郎」中島岳志著

公開日:  更新日:

 下中彌三郎は平凡社の創業者で、「万人に教育を」との思いから日本初の大百科事典を刊行した人である。だが、その人物像は出版人の枠を大きくはみ出している。

 熱烈な愛国者で全人類愛者。子ども至上主義、女性礼賛、天皇主義、労働運動、農本主義と主義主張は大きく振れ、目まぐるしく変化する。戦前・戦中は天皇による「無私の独裁」を説き、「一君万民」のコミューンを夢想した。戦後は一転、急進的な平和主義者となり、日本における世界連邦運動を主導した。時代の流れの中でさまざまな思想、運動に飛びつき、「遊動円木」のあだ名をつけられるほどブレ続けた。

 平凡社創業100周年を記念して下中の伝記執筆を依頼された著者は、大量に残された下中の論考を読み解いて、極端に揺れる主義主張の中に一貫性を見いだそうとする。

 右派、左派の枠組みでは捉えられない下中の「思想巡礼」の根には、幼少期からの貧苦の経験があると著者は見る。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

最新のBOOKS記事

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    5億円の攻防へ 阪神「台湾の三冠王」王柏融獲得は苦戦必至

  2. 2

    桜田大臣に“助っ人”を雇い…安倍首相は海外逃亡の血税浪費

  3. 3

    森友問題の反省ナシ…昭恵夫人が公然と野党批判の“妄言”

  4. 4

    中日・根尾“14歳の冬”の悔恨と決意 野球一本に至る原体験

  5. 5

    毒づきがアダに…和田アキ子"平成ラスト紅白"落選は当然か

  6. 6

    メジャー目指す菊池雄星 金銭以外の“希望条件”が明らかに

  7. 7

    自粛期間終了? NEWS手越祐也が“六本木に再び出没”情報

  8. 8

    原爆Tシャツ、ナチス帽…「BTS」日本への“本格進出”は白紙

  9. 9

    巨人が"第3捕手"と"右の代打"に年俸1.5億円ずつは本当か

  10. 10

    中田翔は3年10億円 破格契約の裏に日ハムの“イメージ戦略”

もっと見る