「プーチン 人間的考察」木村汎著

公開日: 更新日:

「プーチンって、誰?」

 1999年末、ロシアのエリツィン大統領が後継者としてウラジーミル・プーチンを選んだとき、世界のクレムリン・ウオッチャーたちでさえ、彼の名を知らなかった。KGBの職員から大統領に上り詰めたプーチンとは何者なのか。15年もの間ロシアの頂点に君臨しながら、冒頭の疑問は解消されていない。なぜなら、プーチンの私生活は秘密主義の壁に守られているからだ。

 ソ連・ロシア研究の第一人者である著者は、立ちはだかる壁の隙間をかいくぐるように資料やエピソードの断片を収集し、公的伝記を疑い、プーチンの実像に迫ろうと試みた。

 半独裁的なプーチノクラシー(プーチンの統治)は、法や制度ではなく、血縁、地縁、職歴、趣味などを通じてインフォーマルに築かれた人脈「プーチン・チーム」によって運営されている。プーチンを知らなければロシアの政治状況も、どこに向かおうとしているのかも見えてこない。著者がプーチンの人間考察に力点を置いた理由はそこにある。

 プーチンはサンクトペテルブルクの貧しい家庭で育った。背が低く、学校の成績も芳しくなく、幼なじみによれば控えめで引っ込み思案。それでいて、鉄のように強固な性格の持ち主だったという。柔道に励み、ソ連のスパイが活躍する小説に夢中だった少年は、望み通りKGBに採用される。そして、見かけによらない「人たらし」の才と手練手管で人脈を築き、スピード出世する。幸運も手伝って国家の頂点に上り詰めると、生活は大富豪さながら。マッチョなアウトドア派で、時には女性も口説く。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  2. 2

    巨人・桑田二軍監督の電撃退団は“事実上のクビ”…真相は「優勝したのに国際部への異動を打診されていた」

  3. 3

    クマ駆除を1カ月以上拒否…地元猟友会を激怒させた北海道積丹町議会副議長の「トンデモ発言」

  4. 4

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  5. 5

    クマ駆除の過酷な実態…運搬や解体もハンター任せ、重すぎる負担で現場疲弊、秋田県は自衛隊に支援要請

  1. 6

    露天風呂清掃中の男性を襲ったのは人間の味を覚えた“人食いクマ”…10月だけで6人犠牲、災害級の緊急事態

  2. 7

    高市自民が維新の“連立離脱”封じ…政策進捗管理「与党実務者協議体」設置のウラと本音

  3. 8

    阪神「次の二軍監督」候補に挙がる2人の大物OB…人選の大前提は“藤川野球”にマッチすること

  4. 9

    恥辱まみれの高市外交… 「ノーベル平和賞推薦」でのトランプ媚びはアベ手法そのもの

  5. 10

    引退の巨人・長野久義 悪評ゼロの「気配り伝説」…驚きの証言が球界関係者から続々