「藪医 ふらここ堂」朝井まかて著

公開日: 更新日:

 神田三河町の小児科医、天野三哲は、朝が苦手なうえ無愛想で、〈藪のふらここ堂〉とあだ名されている。あるとき、駿河町の大店、坂本屋の手代が飛び込んできた。主の子どもが高熱を出したのに、かかりつけの医者が留守だという。

 娘のおゆんを連れて行ってみると、火鉢で熱気がこもった奥の座敷で上等な布団の山に埋もれて4、5歳の子どもが寝ている。三哲はおゆんに解熱剤を出すように言ったが、薬箱の中には干からびた生姜のようなものが転がっているだけだ。すると三哲は立てこめた障子を開け放ち、布団の山をはがし始めた。「な、何をなさるっ」

 江戸の名物小児科医を描いた9編の短編集。
(講談社 1600円+税)



最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  2. 2

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  3. 3

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  4. 4

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  5. 5

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  1. 6

    国分太一問題で日テレの「城島&松岡に謝罪」に関係者が抱いた“違和感”

  2. 7

    今度は横山裕が全治2カ月のケガ…元TOKIO松岡昌宏も指摘「テレビ局こそコンプラ違反の温床」という闇の深度

  3. 8

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    大谷翔平のWBC二刀流実現は絶望的か…侍J首脳陣が恐れる過保護なドジャースからの「ホットライン」