著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「デッドヒート Final」須藤靖貴著

公開日: 更新日:

 2020年の東京オリンピックを描く小説が早くも登場だ。舞台は男子マラソン。日本代表となった走水剛の視点で語られていく。「暑い暑い暑い」という冒頭の1行から全編が独白である。つまりマラソンのスタートからゴールまでを、選手の視点で描いていくのだ。その間を縫うように、さまざまな人のインタビューが挿入されていく。まずは走水剛に走ることの厳しさ、楽しさを教えてくれた中学、高校、大学、社会人時代の恩師たちだ。そして、それぞれの時代の友人たち、さらには剛の父親で将棋棋士の走水龍治という身内まで登場する。

 そのインタビューを読み進むと、走水剛がどういう少年であったのか、これまでにどんな苦労があったのか、日本代表に選ばれるまでの軌跡がわかるように仕立てられている。秀逸な構成といっていい。実はこれ、全6巻の最終巻である。しかしそういう構成であるので、本書だけを読んでも十分に面白いのだ。

 第1巻から順に読む必要はなく、この第6巻の本書が面白ければ、その後でさかのぼればいい。大学時代に剛からファンキーと呼ばれていたNHKアナウンサーの飛松紀世彦は、どんなファンキーぶりであったのか、そういう細部を知ることができるから、さかのぼる読書も悪くはない。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    立花孝志氏はパチプロ時代の正義感どこへ…兵庫県知事選を巡る公選法違反疑惑で“キワモノ”扱い

  2. 2

    タラレバ吉高の髪型人気で…“永野ヘア女子”急増の珍現象

  3. 3

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  4. 4

    中山美穂さんの死を悼む声続々…ワインをこよなく愛し培われた“酒人脈” 隣席パーティーに“飛び入り参加”も

  5. 5

    《#兵庫県恥ずかしい》斎藤元彦知事を巡り地方議員らが出しゃばり…本人不在の"暴走"に県民うんざり

  1. 6

    シーズン中“2度目の現役ドラフト”実施に現実味…トライアウトは形骸化し今年限りで廃止案

  2. 7

    兵庫県・斎藤元彦知事を待つ12.25百条委…「パー券押し売り」疑惑と「情報漏洩」問題でいよいよ窮地に

  3. 8

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 9

    大量にスタッフ辞め…長渕剛「10万人富士山ライブ」の後始末

  5. 10

    立花孝志氏の立件あるか?兵庫県知事選での斎藤元彦氏応援は「公選法違反の恐れアリ」と総務相答弁