著者のコラム一覧
カモシダせぶん書店員芸人

1988年、神奈川県生まれ。お笑いコンビ「デンドロビーム」(松竹芸能)のメンバー。日本推理作家協会会員。現在、都内の書店でも働く現役の書店員芸人。著書に「探偵はパシられる」など。

未発売のAVから始まる震えるほど怖い怪談「ダクダデイラ」餠屋䖸著

公開日: 更新日:

「ダクダデイラ」餠屋䖸著

 今年も暑い夏が来た。日本の夏といえば怖い話である。だいぶ前にも書いたが今本屋では空前のホラーブームが長いこと続いている。今回紹介するのはそのブームの中生まれたネット怪談集だ。ホラーの中でもネットの文面を使った怪談の書籍は平成中期から量産されているが、この本は従来のそれらよりも鋭利でかつ視点も非常に新しい。過激すぎてエログロの耐性も多少必要だが。

 特に私が本作の中で感嘆し、同時に震え上がった話を2つ紹介しよう。

 まず「みみちゃんと遊んでくれますか?」。こちらで登場するのは「電話帳ナビ」。身に覚えがない番号から電話がかかってきた場合、その番号がどこから、誰からの番号か、過去かかってきた人からの書きこみでわかるサイトだ。私も不在着信で見知らぬ番号が来た場合、このサイトを使って「なんだ、セールスの業者か……」と安心した記憶がある。ここでもある番号にまつわる話が書きこまれている。序盤の書きこみには女性が「みみちゃんと遊んでくれますか?」とひたすら聞いてくるといった内容。不思議ないたずら電話かなと思いきや、さまざまな人物からの書きこみでただごとじゃないのが伝わってくる。「ネットの書きこみ」という出しつくされた題材の中でここをついてきたか! という新鮮さと未知の怖さが非常に良かった。

 もう一つは「関東地方のあるイ●ンについて」。大型スーパーの短期バイト募集に書きこまれた気味の悪い業務内容から始まり、別のネット掲示板やSNSでこのイオンで起きる怪奇現象につながっていく。一見何もおどろおどろしくない場所だからこそギャップにやられる。ちなみに私はイオンの中の書店で働いているので怖さ倍増だった。

 視点とはまた別でこの本のトリを飾る「人ノ形ヲシタ地獄」は怪談としての迫力が段違いだった。とてもこの話のスタートが未発売のAV「禁断の降霊SEX! 死んだ夫と涙の再会! スピリチュアル・クンニで潮吹き絶頂! からのエクトプラズム中出し5連発! 私もあの世に逝っちゃうううううSP2」だとは思えない。ゲンダイだから書ける単語だコレ。本当に震えるほど怖いですよ。

 今確実に最先端かつ最恐の令和のネット怪談集、ぜひ。

 (KADOKAWA 1980円)

【連載】書店員芸人カモシダせぶんの「いい本入ってますよ!」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • BOOKSのアクセスランキング

  1. 1

    暑さを忘れて謎解きに没頭!ミステリー文庫特集(3)プロが厳選する年に1度の短編集 「本格王2026」本格ミステリ作家クラブ選・編

  2. 2

    「身近にあるドラッグ的なものや脱法性に自覚的になることが大切」──「脱法」磯部涼氏

  3. 3

    北村匡平(東京科学大学教授・映画研究者)試行錯誤にこそ、書く歓びがある

  4. 4

    さまざまな無住化した集落──多種多様の廃村の姿を伝える 「廃村大全」浅原昭生著、中田薫編

  5. 5

    コ本や(神楽坂)店主は東京芸大大学院出身アーティストで中原中也賞受賞の詩人

  1. 6

    「史上最強にわかりやすくて面白い ぶっ続け日本史講義10時間」伊藤賀一著/フォレスト出版(選者:中川淳一郎)

  2. 7

    生意気さもツンデレ美少女なら許せる!? 「夫をかわいい女の子にしてみたら」もぐ著

  3. 8

    「安倍晋三 平成・令和の光と闇」服部龍二著/中公新書(選者:佐藤優)

  4. 9

    修繕積立金の怪(1)積立金の上昇はマンションの価格の下落「その家、買ってはいけない」滝島一統著

  5. 10

    BOOKSHOP トランスビュー(新宿区・中井)17坪の店内に百万年書房、共和国など小出版社の本がずらり

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    【2026夏の甲子園】初戦で「勝つ高校」「負ける高校」完全予想!横浜vs沖縄尚学の超好カードは…

  2. 2

    支持率急落の高市政権がV字回復画策 内閣改造でクビ切り不可避な“ポンコツ”5大臣の名前

  3. 3

    黒川紀章設計「戦没者慰霊塔」も丹下健三設計「香川県立体育館」も解体…財政難で維持できなくなった名建築

  4. 4

    2026夏の甲子園「優勝校はココだ!」 本紙と専門家が徹底予想、“対抗”含む5校を紹介

  5. 5

    球宴を見ていて腹が立った 「祭り」と「遊び」をはき違えるな

  1. 6

    バナナマン日村が簡単に復帰できそうにない「もう1つの理由」…レギュラー11本抱える人気者のジレンマ

  2. 7

    「愛子天皇」潰しは賛成で、消費税減税はなぜ反対? 玉木国民民主の「公約違反」がネットで袋叩き

  3. 8

    トランプ大統領もそっぽ 表面化した日米包囲網「反高市」うねり急拡大…2大後ろ盾が剥落

  4. 9

    三男・清水良太郎さん急死で清水アキラ沈痛…8年越しの「父子再共演」が始まったばかりだった

  5. 10

    「朝」「彦」「憲」「恒」…旧宮家に残る皇族意識 養子制度で改めて注目された「通字」