北上次郎
著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「限界点」ジェフリー・ディーヴァー著、土屋晃訳

公開日: 更新日:

 いやはや面白い。主人公コルティは連邦機関所属のボディーガードである。本書はこの男の一人称で語られる。警護対象は刑事ケスラーとその家族だ。追ってくる敵の名はヘンリー・ラヴィング。拉致して拷問によって情報を引き出すのが敵の生業で、だから「調べ屋」という。相手も凄腕のプロなので、ようするに知恵比べである。こういうものを描くと、ディーヴァーの筆は冴えまくる。もうスリル満点だ。

 事態を複雑なものにしているのは、なぜケスラーが狙われるのか、それがコルティにはわからないことだ。それがわかれば、ヘンリー・ラヴィングに仕事を依頼した者の名前もわかる。それを解決しないと真の解決にはならない。だからケスラー刑事のこれまでの仕事も同時に調べることになる。コルティはケスラー家族につきっきりなので、調べるのは部下のクレアだ。こういう脇のキャラクターもなかなかいい。

 息詰まるような緊迫した攻防がめまぐるしく展開するので、ホント、目が離せない。ディーヴァーお得意のどんでん返しもあるので、たっぷりと楽しめる。

 ディーヴァーは科学捜査の天才リンカーン・ライムを主人公にしたシリーズや、人間嘘発見器キャサリン・ダンスを主人公とするシリーズで知られるベストセラー作家だが、本書はシリーズ外の単発作品である。ノンシリーズとはもったいないほどの痛快サスペンスだ。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  2. 2
    悠仁さまは昆虫学を究めたいと望むも…「自然誌を学ぶ大学」が玉川大学ではなく東大が濃厚なワケ

    悠仁さまは昆虫学を究めたいと望むも…「自然誌を学ぶ大学」が玉川大学ではなく東大が濃厚なワケ

  3. 3
    『ザ・ノンフィクション』話題の婚活回で“パロディー”にもなった50代男性の現在

    『ザ・ノンフィクション』話題の婚活回で“パロディー”にもなった50代男性の現在

  4. 4
    7カ月遅れで完成…岡田准一&宮崎あおい“5億円豪邸”の評判

    7カ月遅れで完成…岡田准一&宮崎あおい“5億円豪邸”の評判

  5. 5
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  1. 6
    竹内結子さん急死 ロケ現場で訃報を聞いたキムタクの慟哭

    竹内結子さん急死 ロケ現場で訃報を聞いたキムタクの慟哭

  2. 7
    「らんまん」語りで8年ぶり地上波連ドラ出演も…宮崎あおい“不倫・略奪”に今も女性の拒否反応

    「らんまん」語りで8年ぶり地上波連ドラ出演も…宮崎あおい“不倫・略奪”に今も女性の拒否反応

  3. 8
    小室圭さん“年収倍増”報道で《お前らが努力しなかった10年で年収3800万円になった》投稿が話題

    小室圭さん“年収倍増”報道で《お前らが努力しなかった10年で年収3800万円になった》投稿が話題

  4. 9
    STARTO本格始動で際立つ日テレのシタタカさ…TV各局×旧ジャニーズ“蜜月濃度”には微妙な変化

    STARTO本格始動で際立つ日テレのシタタカさ…TV各局×旧ジャニーズ“蜜月濃度”には微妙な変化

  5. 10
    小池都知事は次の選挙で「カイロ大卒」と記すのか 学歴詐称疑惑再燃で「選挙公報」に注目集まる理由

    小池都知事は次の選挙で「カイロ大卒」と記すのか 学歴詐称疑惑再燃で「選挙公報」に注目集まる理由