「革命のジョン・レノン」ジェイムズ・A・ミッチェル著、石崎一樹訳

公開日: 更新日:

アメリカと対峙したロックスター

 1970年にビートルズが解散した後、ジョン・レノンとオノ・ヨーコはニューヨークのグリニッジ・ビレッジで暮らし始めた。カウンターカルチャー全盛のニューヨークは、このロックスターを放ってはおかなかった。反体制活動家、ミュージシャン、アーティストたちとの交流が生まれ、政治運動に参加するようになった。

 大麻所持で重過ぎる実刑判決を受け、服役中だった反戦活動家ジョン・シンクレアはジョン・レノンが参加した救済コンサートの後、釈放された。元ビートルズのビッグネームには、刑務所の扉をこじ開ける力があった。反戦、公民権運動、人種差別撤廃、ウーマンリブ……。

 体制変革のために闘う活動家たちは、ジョンとヨーコを「革命の中心」に連れていこうとした。しかし、ジョンは純粋にアーティストでありたかったのだ。商業主義と決別し、新しいミュージシャン仲間と自由に自分の音楽をつくろうとしていた。それは結果的に革命を促すメッセージにもなった。

 そんなジョンを、FBIが厳しく監視し始める。ニクソン政権は、ジョンを国家の治安を脅かす扇動者と見なした。多くの支援を得て、ようやくアメリカ永住権を獲得したのは1976年。ニューヨークでの最初の5年間は、国家権力との闘いの日々でもあったのだ。

 その間に交流のあった反体制活動家やバンドのメンバーへのインタビューをもとに、この評伝が生まれた。ビートルズのジョンとは別の顔がここにある。いまや神話となったロックスターは決して聖人ではなかった。しかし、その生き方は一貫していた。憎しみより愛、暴力より非暴力、戦争より平和。だからジョンの音楽は今も人の心を動かす。(共和国 2400円+税)


【連載】人間が面白い

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    安青錦の大関昇進めぐり「賛成」「反対」真っ二つ…苦手の横綱・大の里に善戦したと思いきや

  2. 2

    長嶋一茂は“バカ息子落書き騒動”を自虐ネタに解禁も…江角マキコはいま何を? 第一線復帰は?

  3. 3

    トリプル安で評価一変「サナエノリスク」に…為替への口先介入も一時しのぎ、“日本売り”は止まらない

  4. 4

    "お騒がせ元女優"江角マキコさんが長女とTikTokに登場 20歳のタイミングは芸能界デビューの布石か

  5. 5

    【独自】江角マキコが名門校との"ドロ沼訴訟"に勝訴していた!「『江角は悪』の印象操作を感じた」と本人激白

  1. 6

    今田美桜に襲い掛かった「3億円トラブル」報道で“CM女王”消滅…女優業へのダメージも避けられず

  2. 7

    実は失言じゃなかった? 「おじいさんにトドメ」発言のtimelesz篠塚大輝に集まった意外な賛辞

  3. 8

    99年シーズン途中で極度の不振…典型的ゴマすりコーチとの闘争

  4. 9

    27年度前期朝ドラ「巡るスワン」ヒロインに森田望智 役作りで腋毛を生やし…体当たりの演技の評判と恋の噂

  5. 10

    今田美桜が"あんぱん疲れ"で目黒蓮の二の舞いになる懸念…超過酷な朝ドラヒロインのスケジュール