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「朱の記憶 亀倉雄策伝」馬場マコト著

 燦然と輝く大きな朱の太陽と、金一色の五輪、その下にTOKYO 1964の力強い文字。亀倉雄策デザインのオリンピックエンブレムは、今も日本人の記憶に深く刻まれている。

 なんと、この作品はコンペの当日、催促の電話を受けてからわずか10分ほどでラフを描き、急いで助手に清書させたものだった。

 自ら言い出したデザインコンペの締め切りを失念するほど、亀倉は多忙を極めていた。審査会場に駆けつけ、できたばかりのポスターを広げると、会場はしんと静まり、やがて審査員のひとりが沈黙を破った。

「決まったな」

 満場一致だった。

 短時間で仕上げたからといって、やっつけ仕事とはわけが違う。あのエンブレムには、亀倉の歳月が凝縮されていた。

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