「奔走老人」谷川洋著

公開日: 更新日:

 定年まであと5年というところで妻を亡くした著者は、今後の人生を考えた。3人の息子も巣立ち、妻も亡くなり、ひとりになったときに何をすべきか。ありきたりのプランしか思い浮かばないまま、定年まであと2カ月となったある日、アジアの辺境地の学校づくりの話が舞い込んできた。本書は、60歳からアジアの奥地に飛び込んで220校以上の学校をつくった男の汗と涙のドキュメンタリーだ。

 学校をつくる国際支援が、「校舎をつくったらおしまい」で、その後廃校になってしまうケースが少なくないことを聞いた著者は、「現地に学校を建設する」「建設には親や住民が参加する」「現地の学校と日本の学校が協定を結んで国際交流を行う」の3点を必須条件にスタート。ラオス、ベトナム、タイ、中国、スリランカなどの僻地に足を運び、住民と話し合いながら学校づくりに奔走する。必要とされない人生の始まりだと思っていたという定年から、全力疾走が始まった著者の奮闘ぶりが凄い。(ポプラ社 1500円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  2. 2

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  3. 3

    前田健太は巨人入りが最有力か…古巣広島は早期撤退、「夫人の意向」と「本拠地の相性」がカギ

  4. 4

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  5. 5

    来春WBCは日本人メジャー選手壊滅危機…ダル出場絶望、大谷&山本は参加不透明で“スカスカ侍J”に現実味

  1. 6

    詞と曲の革命児が出会った岩崎宏美という奇跡の突然変異種

  2. 7

    高市政権にも「政治とカネ」大噴出…林総務相と城内経済財政相が“文春砲”被弾でもう立ち往生

  3. 8

    「もう野球やめたる!」…俺は高卒1年目の森野将彦に“泣かされた”

  4. 9

    連立与党の維新が迫られる“踏み絵”…企業・団体献金「規制強化」公明・国民案に立憲も協力

  5. 10

    新米売れず、ささやかれる年末の米価暴落…コメ卸最大手トップが異例言及の波紋