「新極道記者」塩崎利雄著

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 本紙連載「止まり木ブルース」の著者塩崎利雄には「極道記者」という賭博小説の傑作がある。いまから40年前に書かれた長編だが、いま読んでも全然古びておらず、ひたすら面白いから素晴らしい。一時期は幻の傑作といわれるほど長い間絶版であったが、1991年に復刊されてからは各社の文庫に入り、いまなお多くの読者に読まれている。それが傑作の力というものだ。

 本書「新極道記者」はタイトルからわかるように、その傑作「極道記者」の続編である。前作が復刊された直後に雑誌に連載されたもので、つまり20年以上も単行本化されずに眠っていたことになる。これもまた正編に負けず劣らず面白いのに、なんともったいないことか。しかしこれもまた、正編と同様に長く読まれていくと思う。

 主人公は前作に引き続き、スポーツ新聞の記者松崎。登場する種目は、競馬、麻雀、手本引き。我々のようなセコい賭けなら負けてもたいしたことはないが、この男の場合はそもそもレベルが異なる。勝つときもでかいが、負けるときもケタはずれの額なのである。かくて、ひりひりする熱さが行間から立ち上ってくる。

 続編とはいっても続いているわけではないので前作を未読でも大丈夫。ギャンブル小説の雰囲気を味わいたい人はぜひ前作まで遡りたい。ちなみに前作の「極道記者」は近年、文芸社文庫に入ったので読みやすくなった。(徳間書店 1600円+税)


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