著者のコラム一覧
佐々木寛

1966年生まれ。専門は、平和研究、現代政治理論。著書(共著)に「市民社会論」「『3・11』後の平和学」「地方自治体の安全保障」など多数。現在、約900キロワットの市民発電所を運営する「おらってにいがた市民エネルギー協議会」代表理事、参院選新潟選挙区で野党統一候補を勝利に導いた「市民連合@新潟」の共同代表。

「グローバル・タックス」を可能にする方法

公開日: 更新日:

「世界の富を再分配する30の方法」上村雄彦著 合同出版 1400円+税

 新潟の激しい知事選が終わり(この原稿を書いている段階でまだ勝敗は全く予測できないのだが)、選挙戦の過程であらためて気がついたことは、日本の国家権力の真の姿であった。自民党の二階幹事長が経団連幹部との懇談で、「何とかして、(自民、公明推薦候補の)勝利を考えていきたいと思いますが、どうか電力業界など、オール日本でやっぱり対抗していかないといけない」と語ったように、「オール日本」というのは、官邸や与党とならんで経団連や電力業界のことを意味するらしい。私たちはその二階さんの言う「オール日本」と闘ったわけだが、それはつまり、今回の知事選では、私たち新潟の市民がその「日本」に入っているのかいないのかが問われたということになる。

 もう誰もが知っていることだが、現代世界の権力は、グローバル資本主義に根差している。簡単に言えば、富をもてる1%が残りの99%を支配する世界だ。もういいかげん世界全体を公正にしない限り、次々と噴出する問題を解決できなくなっている。しかもそれを暴力革命によって実現することもできない。残る方法はひとつだ。グローバルな制度を漸進的に変えていくしかない。

 本書が提起する「グローバル・タックス」(地球レベルの徴税制度)は、そのもっとも有力な方法のひとつである。化け物のような金融取引や悪魔のような兵器取引に税金をかけて、その集めた資金をエイズ対策や貧富の格差の是正、地球温暖化対策などに使う。いたって合理的である。ただ問題は、このような事実上の「世界政府」の機能をどうやって実現するのかということである。本書は、それを「絵に描いた餅」にしないために、きわめて具体的な方法を提示する。しかも「中学3年生くらいから理解できること」をめざして。

 本書の編著者は、長年にわたり、単に研究者としてだけではなく、活動家としてもこの問題一筋に取り組んできた。小著であるが、内容は豊穣である。

【連載】希望の政治学読本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    注目集まる「キャスター」後の永野芽郁の俳優人生…テレビ局が起用しづらい「業界内の暗黙ルール」とは

  4. 4

    柳田悠岐の戦線復帰に球団内外で「微妙な温度差」…ソフトBは決して歓迎ムードだけじゃない

  5. 5

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    ローラの「田植え」素足だけでないもう1つのトバッチリ…“パソナ案件”ジローラモと同列扱いに

  3. 8

    ヤクルト高津監督「途中休養Xデー」が話題だが…球団関係者から聞こえる「意外な展望」

  4. 9

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  5. 10

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?