「浜の甚兵衛」熊谷達也著

公開日: 更新日:

 明治三陸地震が起こった明治29年。三陸の仙河漁港で沖買船の商売をしていた菅原甚兵衛は、自分が沖に出ているうちに大きな津波が釜戸の集落を襲ったことを知り、愕然とする。

 甚兵衛が戻った村の人々はすべて海にもっていかれ、がれきに埋まっていたのは遺体ばかり。生き残ったのは、たまたまそのとき村から出ていた者だけだった。

 惨状を目の当たりにした甚兵衛は、妾の子として、親子2代で裕福な魚問屋マルカネの社長にぶら下がって、どこか開き直りながら生きてきた今までの生き方に疑問を覚えるようになった。その後、海上の事故で船を失ったことを契機に、大きな借金を抱えつつも、一発逆転を狙って北洋でのラッコ・オットセイ漁に出ることを企てるのだが……。

 架空の港町・仙河海を舞台に、自らの生き方を貫いていく男の成長物語。東日本大震災を機に、著者が描いてきた「仙河海」シリーズの出発点になる作品にあたる。

 男気あふれる主人公の姿が魅力的に描かれている。(講談社 1700円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は

  3. 3

    気温50度の灼熱キャンプなのに「寒い」…中村武志さんは「死ぬかもしれん」と言った 

  4. 4

    U18日本代表がパナマ撃破で決勝進出!やっぱり横浜高はスゴかった

  5. 5

    坂口健太郎に永野芽郁との「過去の交際」発覚…“好感度俳優”イメージダウン避けられず

  1. 6

    大手家電量販店の創業家がトップに君臨する功罪…ビック、ノジマに続きヨドバシも下請法違反

  2. 7

    板野友美からますます遠ざかる“野球選手の良妻”イメージ…豪華自宅とセレブ妻ぶり猛烈アピール

  3. 8

    日本ハム・レイエスはどれだけ打っても「メジャー復帰絶望」のワケ

  4. 9

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  5. 10

    自民党総裁選の“本命”小泉進次郎氏に「不出馬説」が流れた背景