著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「Y先生と競馬」坪松博之著

公開日: 更新日:

 Y先生とはもちろん山口瞳のことで、著者は「サントリークォータリー」の編集を担当した縁で(つまり山口瞳の後輩だ)、山口瞳と知り合い、競馬場に同行するようになる。その日々を回顧する書なので、男性自身シリーズや「草競馬流浪記」などから、競馬に関する山口瞳の名言が次々に引用されているのが興味深い。

 その一番は「旦那はギャンブルで儲けてはいけない。少し損するくらいがいい。ギャンブルで儲けるのは下品である」というものだ。自慢じゃないが私、競馬を始めて44年、いまだに一度も年間プラスになったことがない。正直に言うと、下品でもいいと思っているのだが、残念ながら下品になり切れていないというのが本音。

 うれしかったのは、Y先生が500円のお釣りがくるように馬券を買うというくだり。

 それで500円玉貯金をして、後日の競馬資金にするというのだが、私、まったく同じことをしているので、ここはうれしかった。

 誤解が一つ解けたことも書いておく。実は山口瞳の競馬本に馴染めないことが一つあったのだ。どこの競馬場に行っても関係者席に入るというのはどんなものか、と思っていたのである。

 ところが東京競馬場では1階スタンドの4コーナー寄りでいつもレース観戦していたという。関係者席に入るようになったのは、還暦を過ぎてからだったというのだ。途端に、Y先生に親近感を抱くのである。(本の雑誌社 2200円+税)

【連載】北上次郎のこれが面白極上本だ!

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阪神・大山悠輔「5年20億円」超破格厚遇が招く不幸…これで活躍できなきゃ孤立無援の崖っぷち

  2. 2

    織田裕二がフジテレビと決別の衝撃…「踊る大捜査線」続編に出演せず、柳葉敏郎が単独主演

  3. 3

    兵庫県・斎藤元彦知事を待つ12.25百条委…「パー券押し売り」疑惑と「情報漏洩」問題でいよいよ窮地に

  4. 4

    W杯最終予選で「一強」状態 森保ジャパン1月アジア杯ベスト8敗退からナニが変わったのか?

  5. 5

    悠仁さまは東大農学部第1次選考合格者の中にいるのか? 筑波大を受験した様子は確認されず…

  1. 6

    指が変形する「へバーデン結節」は最新治療で進行を食い止める

  2. 7

    ジョン・レノン(5)ジョンを意識した出で立ちで沢田研二を取材すると「どっちが芸能人?」と会員限定記事

  3. 8

    中山美穂さんの死を悼む声続々…ワインをこよなく愛し培われた“酒人脈” 隣席パーティーに“飛び入り参加”も

  4. 9

    巨人今季3度目の同一カード3連敗…次第に強まる二岡ヘッドへの風当たり

  5. 10

    「踊る大捜査線」12年ぶり新作映画に「Dr.コトー診療所」の悲劇再来の予感…《ジャニタレやめて》の声も