「江の島ねこもり食堂」名取佐和子著
高2の佐宗麻布の家は江の島で民宿兼食堂〈半分亭〉を営んでいる。
ある日、母が「荷物をまとめな。夜逃げするから」と言う。荷造りしていた母は繊細な装飾がついた貝のかんざしを、そっとポケットにしまった。一家は借金取りを騙し、船で島から逃げ出す。
15年後、麻布は赤ん坊を連れて久しぶりに江の島を訪れる。見知らぬ女性が〈半分亭〉を引き継いでいて、注文した江の島丼は考案した麻布の祖父の味そのままだった。そして、その女性と麻布の因縁を解き明かしてくれたのは、曽祖母から代々託されてきた貝のかんざしだった。
江の島の猫を守りながら食堂を営んできた家族の、100年にわたる物語。(ポプラ社 1500円+税)