「スウィングしなけりゃ意味がない」佐藤亜紀氏

公開日: 更新日:

 若者たちをファシズム体制に順応させることを狙い組織された「ヒトラー・ユーゲント」。1936年以降はドイツの国家機関となり、ドイツの青少年たちは集団活動を通じて肉体の鍛錬を行い、祖国愛とナチ思想を教え込まれた。

「しかし、そんな画一的な価値観の押し付けに従う若者ばかりでないのは、今も昔も同じこと。当時も、ヒトラー礼賛など“バカじゃねぇの?”とばかりに反発した若者たちは、決して少なくなかったようです」

 本書は、1940年前後のハンブルクを舞台に、敵性音楽として排斥されたジャズに熱狂した若者たちを主人公に描かれる物語である。当時のドイツには、ナチス政権に反旗を翻した「白バラ」や、労働者階級の子弟たちで組織された「エーデルワイス海賊団」などの抵抗グループがあったが、本作の着想を得たのは、「スウィング・ユーゲント」と呼ばれた若者たちだった。

「彼らは中産階級の子弟であり、体制には反発するものの、ことさら反戦を唱えるわけではないんですね。いわゆる“ノンポリ”です。わざと長髪やおしゃれをし、夜な夜なクラブに集まってはドイツ精神に有害とされたジャズに合わせて踊り狂う。そんな刹那的、享楽的な生き方は、ナチスという受け入れがたい現実への抵抗であったのかもしれません」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    世良公則氏やラサール石井氏らが“古希目前”で参院選出馬のナゼ…カネと名誉よりも大きな「ある理由」

  2. 2

    新横綱・大の里の筆頭対抗馬は“あの力士”…過去戦績は6勝2敗、幕内の土俵で唯一勝ち越し

  3. 3

    年収1億円の大人気コスプレーヤーえなこが“9年間自分を支えてくれた存在”をたった4文字で表現

  4. 4

    浜田省吾の父親が「生き地獄」の広島に向ったA.A.B.から80年

  5. 5

    山尾志桜里氏は出馬会見翌日に公認取り消し…今井絵理子、生稲晃子…“芸能界出身”女性政治家の醜聞と凄まじい嫌われぶり

  1. 6

    「徹子の部屋」「オールナイトニッポン」に出演…三笠宮家の彬子女王が皇室史を変えたワケ

  2. 7

    “お荷物”佐々木朗希のマイナー落ちはド軍にとっても“好都合”の理由とは?

  3. 8

    ドジャース佐々木朗希 球団内で「不純物認定」は時間の問題?

  4. 9

    くら寿司への迷惑行為 16歳少年の“悪ふざけ”が招くとてつもない代償

  5. 10

    フジ親会社・金光修前社長の呆れた二枚舌…会長職辞退も「有酬アドバイザー」就任の不可解