いま、そこにある朝鮮半島危機

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「だまされないための『韓国』」浅羽祐樹、木村幹著

 文在寅新大統領誕生に沸く韓国。しかし韓国と半島を取り巻く状況は単に国家元首が交代しただけでは明るくならない――。

 いずれも韓国ウオッチを続ける研究者である著者2人は、昨年11月、まだ朴大統領の弾劾などの行方のわからなかった時点で本書を計画したという。一寸先の予想すらつかないほどダイナミックに変化する韓国政治。だが終わってみれば今回の選挙、最後まで争った文在寅と安哲秀の2人は前回(2012年)選挙でも朴槿恵と相争った仲。つまり大きな構図には変化なく、新たな社会への展望は依然として欠けているのが現状なのだ。

 そこで必要なのは正確な情報と現状についての認識。ところがネットの発達した現在はそれがうまくいかない。日韓双方とも極論をもてあそぶ右派は少数だが、その動きをメディアが詳報し、それを見たネットユーザーが大声で拡散することで無用のトラブルが増加する。その繰り返しというのだ。対談形式による忌憚(きたん)ない韓国論。(講談社 1300円+税)

「独裁国家・北朝鮮の実像」坂井隆、平岩俊司著

 公安調査庁で長年韓国ウオッチを重ねてきたベテランの元調査官と、韓国政治を専門にする国際政治学者の対談。2人は冒頭で現今の北朝鮮のふるまいは「若くて経験不足の独裁者」の思いつきや気まぐれではない、と明言。冷静に中国の出方を見切って核実験に踏み切っているし、中国側も日本よりはるかに長い時間軸で朝鮮半島の非核化を視野にしているという。

 そこで問題になるのは北朝鮮の信頼性。果たして真剣に交渉するのにふさわしい相手なのかということだ。これについて著者は、信頼と交渉の余地はあるという。94年の米朝合意枠組みも、先に壊したのは米ブッシュ政権。中国との関係も、内政干渉されるのを嫌い、裏切っても翌日は平然と同盟するようなドライなものだという。

 日米関係のような「主人とポチ」とはわけが違うということだろう。(朝日新聞出版 1800円+税)

「韓国左派の陰謀と北朝鮮の擾乱」高永喆著

 韓国・文在寅政権の誕生でいま一番懸念されるのは何か。左派として対米従属をよしとしない文政権の登場は韓米同盟に亀裂を生みやすくなり、その隙を突いて北朝鮮が局地戦を仕掛ける。しかし、文政権が容認姿勢で譲歩すると北の行為はエスカレートし、第2次朝鮮戦争が起きやすくなるのだ――。

 こう主張するのは韓国の元国防省分析官。本書ではこの専門家と日本きってのインテリジェンスの専門家が臨む対談形式の現代韓国論が前半を占める。金正恩に最も影響力ある存在は実妹の金与正(キム・ヨジョン)組織指導部副部長だ、という指摘などは専門家ならではのものだろう。文在寅政権に対しては明らかに否定的なスタンスだ。(KKベストセラーズ 1100円+税)

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