「進行がんは『免疫』で治す」角田卓也著

公開日: 更新日:

 がんは不治の病ではなくなりつつあるが、進行がんとなると抗がん剤しか打つ手がなくなり、克服が難しくなる。しかし今、最先端のがん免疫療法が、がん完治への道を開きつつあるという。その鍵を握るのが、「免疫チェックポイント阻害剤」だ。

 CTL(細胞傷害性T細胞)と呼ばれる免疫細胞は、がん細胞に対してスナイパーのように直接攻撃を仕掛ける頼もしい存在だ。しかし、活性化し過ぎると必要以上に体を痛めつけるため、ブレーキ役として働く分子も備わっている。増殖したがん細胞はこの仕組みを悪用し、CTLの働きにブレーキをかけることができる。そのため、なかなか免疫力を発揮することができないのだという。

 これまでの免疫療法では、免疫力強化、つまりアクセルを踏む力を強めることばかりに注力してきた。しかし今、この発想を変えてブレーキを解除する「免疫抑制解除療法」が誕生している。そのために用いられるのが「免疫チェックポイント阻害剤」であり、世界各国で研究が進み、日本国内でもすでに2種類が承認されている。

 現在、免疫チェックポイント阻害剤による奏効率(がん細胞が縮小もしくは消滅した割合)は20~30%。一見低いようだが、これは早期がんを含めない、末期がんのみを対象としたデータであり、大きな希望と言えるだろう。(幻冬舎 1300円+税)

【連載】長生きする読書術

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  2. 2

    これぞ維新クオリティー!「定数削減法案」絶望的で党は“錯乱状態”…チンピラ度も増し増し

  3. 3

    「おこめ券」迫られる軌道修正…自治体首長から強烈批判、鈴木農相の地元山形も「NO」突き付け

  4. 4

    査定担当から浴びせられた辛辣な低評価の数々…球団はオレを必要としているのかと疑念を抱くようになった

  5. 5

    岡山天音「ひらやすみ」ロス続出!もう1人の人気者《樹木希林さん最後の愛弟子》も大ブレーク

  1. 6

    12月でも被害・出没続々…クマが冬眠できない事情と、する必要がなくなった理由

  2. 7

    やはり進次郎氏は「防衛相」不適格…レーダー照射めぐる中国との反論合戦に「プロ意識欠如」と識者バッサリ

  3. 8

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  4. 9

    黄川田地方創生相が高市政権の“弱点”に急浮上…予算委でグダグダ答弁連発、突如ニヤつく超KYぶり

  5. 10

    2025年のヒロイン今田美桜&河合優実の「あんぱん」人気コンビに暗雲…来年の活躍危惧の見通しも