夏休みに知識をバージョンアップ 学び直し「教科書本」特集

公開日: 更新日:

 学校を卒業して、はや何十年。いまどきの教科書を開いてみると、昔の記憶とは違う一文が続々と見つかるらしい。パソコンのバージョンアップもいいけれど、自分の頭もたまには更新しておかないとサビついてしまうかも。ということで今回は、学び直しの教科書にこだわった本4冊をご紹介!

 富裕層が富めば貧しい者も豊かになれるといったトリクルダウン理論や、困ったときの財政出動など、救世主めいたスローガンは登場したものの、一向に光が見えない日本経済。いったい我々はどこで何を間違ったのかと首をひねっているなら菅原晃著「中高の教科書でわかる経済学 マクロ篇」(河出書房新社 1900円+税)を手にとろう。

 本書は、現役の公立高校教諭の著者が中高生の教科書や資料集などをもとに最新のマクロ経済学を解説した指南書だ。

 いま日本の中高年の経済学的知識は、40年以上前の新自由主義や市場原理主義で止まっていると指摘する。というのも、日本は高度成長期の成功体験に酔ったまま長年ケインズ型理論から抜け出せず、最新の経済学理論を90年代末まで教科書から排除していた。

 そのため、80~90年代に大学を卒業した人は、経済のカラクリが世界で変容したことを理解しないまま社会に出て、40代、50代となってしまったらしい。そしてその結果、トンデモ理論をうたった経済政策が繰り返され、失われた20年が実現したというのだから恐ろしい。

 たとえば第1章のGDPの項目を読んだだけでも、①日本は貿易大国だったことは一度もなく、実際は内需が巨大な経済大国だったこと②アベノミクスでは株価を上げることを目的に円安誘導したが実は円安効果は短期的なものにしかならないこと③「貿易赤字で日本の富が海外に流出している」というのは嘘で、「貿易赤字は海外が日本に富を流入させている状態」だということなど、大人世代の思い込みやマスコミの論調とは全く違う、日本経済の実態が見えてくる。

 モノづくりや製造業を強くして国民所得を倍増させる80年代の古い経済学の見方ではなく、未来に対する期待や不安が経済活動を決定するという最新の経済学(動学的一般均衡理論)の見方を知り、それを実践していくことが、これから日本経済立て直しの鍵になると著者はいう。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人がソフトB自由契約・有原航平に「3年20億円規模」の破格条件を準備 満を持しての交渉乗り出しへ

  2. 2

    長瀬智也が国分太一の会見めぐりSNSに“意味深”投稿連発…芸能界への未練と役者復帰の“匂わせ”

  3. 3

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  4. 4

    元TOKIO松岡昌宏に「STARTO退所→独立」報道も…1人残されたリーダー城島茂の人望が話題になるワケ

  5. 5

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  1. 6

    西武にとってエース今井達也の放出は「厄介払い」の側面も…損得勘定的にも今オフが“売り時”だった

  2. 7

    立花孝志容疑者を追送検した兵庫県警の本気度 被害者ドンマッツ氏が振り返る「私人逮捕」の一部始終

  3. 8

    日吉マムシダニに轟いた錦織圭への歓声とタメ息…日本テニス協会はこれを新たな出発点にしてほしい

  4. 9

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  5. 10

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…