「鎖国の地球儀」松尾龍之介著
江戸時代に長崎の天文地理学者・西川如見が著した日本初の世界地誌「華夷通商考」。鎖国の時代にオランダ船から得た情報を基に世界事情を紹介したこの本は、ベストセラーになったという。
江戸時代の人々は、出島という小さなのぞき窓から見えた世界をどのようにとらえていたのか。本書は、そんな当時の世界の見方が見えてくる「華夷通商考」を現代語訳し、イラストとともに解説文を加えた貴重な一冊だ。
興味深いのは、全5巻のうち中国が縁の深い国として2巻を割いて紹介されており「外国」とはされていないことだ。
中国以外で漢字を用いる国を「外国」とし、漢字を用いない国を「外夷」として、外夷をどこか下に見るように分けて考えている。
特産品までが、事細かに書かれている中国に対して、縁もゆかりもない国をまとめた5巻「夷狄戎蛮」には小人国などのホラ話のような逸話も。
鎖国時代の人々の、旺盛な好奇心を垣間見ることができる。
(弦書房 2300円+税)