最新ミステリー小説特集

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「ワルツを踊ろう」中山七里著

 ミステリー好きなら、謎解きの面白さで最後に「あっ」と言わされる小説を見つけたいはず。今回は、アート、ストーカー、ユーモア、限界集落、データ誘拐の5つのテーマのミステリーをご案内。さて、あなたの好みはどれ?

◇

 主人公は、かつて川崎市内の外資系金融企業に勤めていた元エリートサラリーマン・溝端了衛39歳。リーマン・ショックのあおりを受けてリストラされてしまい、再就職先を見つけることもできないでいるうち、病気療養中の父親が亡くなってしまった。母親はすでに他界しており、了衛には父親の住んでいた土地建物と田畑が残された。

 すでに失業中の身、迷うことなく実家に移り住んだのだが、20年ぶりに帰郷した故郷は7世帯9人しか住人のいない限界集落。地域に溶け込もうと努力するものの、なにもかもが裏目に出て、ついに窓ガラスが割られたり、庭に糞尿がまかれたりといったいやがらせまで受けるように。次第に理性を失っていく了衛は、とんでもない行動に出ることを決意する……。

「さよならドビュッシー」で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した著者の最新作。最後の最後の種明かしまで、一気に読ませる筆力はさすが。

(幻冬舎 1600円+税)

「消えない月」畑野智美著

 河口さくらは、「福々堂マッサージ」で働く女性マッサージ師。信用金庫のOL時代に高齢者につきまとわれたことをきっかけに、資格を取得してマッサージ師になったさくらだが、職場の人間関係にも恵まれ、固定客も付き始めて徐々に生活も安定し始めていた。

 そんなある日、常連客の編集者・松原から付き合ってほしいという告白を受ける。見た目も良く、大手出版社の社員だという彼に興味を持っていたこともあり、告白を受け入れ付き合うことに。

 しかし付き合いが深まるにつれ、松原はさくらの交友関係に口を出し自分の理想通りの女になるように強要し始めた。窮屈になったさくらは別れを告げたのだが、そこから松原の執拗なストーカー行為が始まってしまう……。

「国道沿いのファミレス」で第23回小説すばる新人賞を受賞した著者による最新作。ストーカーにつきまとわれる女性側の視点と、自覚のないままストーカーと化していく男性側の視点が交互に描かれ、恋愛の名のもとに狂気に陥る男女の心模様を、鳥肌がたつほど恐ろしくリアルに描いている。

(新潮社 1800円+税)

「嘘をつく器」一色さゆり著

 物語の語り手は、西村世外という有名な陶芸家の窯元で修業中の早瀬町子。陶芸に夢中な町子に目をかけてくれた西村は、見たことを絶対に口外しないでほしいという条件つきで、瑠璃色の輝きを放つ不思議な器を彼女に見せた。素朴さや温かみのある焼き物とは正反対のその器に衝撃を受けた町子は、休日に母校で一番の知識人の教授・馬酔木泉を訪ね、目撃したものが国宝「曜変天目茶碗」だということを知る。

 なぜ西村がそんな高価な器を隠れて作っていたのか。疑問を抱えて窯元に戻った町子だったが、自分が留守にしていたその時間に西村が何者かによって殺されたことを知らされる。西村は誰になぜ殺されたのか。町子は死の真相を探ろうとするのだが……。「神の値段」で第14回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した著者による最新作。東京芸術大出身の学芸員としての顔を持つ著者ならではの知識を駆使した、文句なしのアートミステリーに仕上がっている。

(宝島社 1380円+税)

「逆向誘拐」文善著 稲村文吾訳

 国際投資銀行「A&B」の上級副総裁であるジョン・パーカーのもとに、見知らぬアドレスから一通の脅迫メールが届くところから物語は始まる。脅迫は、「A&B」の扱うある会社の財務データの機密文書を誘拐したので、公開しないでほしければ身代金を用意しろというもの。

 データを人質にとるという前代未聞の事態に、ジョンは箝口令を敷いて表沙汰にならないうちに事件を解決しようとする。財務データにアクセスできる人物は限られており、警察に疑われ始めた情報システム部のエンジニア植嶝仁は、独自に調査を始めるのだが……。

 本作は、中国語で書かれた未発表の本格ミステリー長編に対して与えられる島田荘司推理小説賞の第3回受賞作品。

 人ではなくデータを人質にとるというIT時代の新しい形の誘拐のアイデアに加えて、表面上の脅迫とは別に水面下では別の物語が進行する。

 日系や華人の移民も登場し、国際色豊かな誘拐ミステリーとなっている。

(文藝春秋 1200円+税)

「バック・ステージ」芹沢央著

 新入社員の松尾は、面倒なものには巻き込まれないように無難に日常を送ることを心掛けている「ことなかれ社員」。しかしある日、退社後に忘れた携帯電話を取りに行ったところで、上司が取引先からキックバックを受けている証拠を康子先輩が探しているところに出くわした。見なかったことにして逃げるつもりが康子につかまり、翌日一緒に証拠探しをさせられるはめに。

 奇策ともいえる康子のやり方に唖然としながら証拠を見つけたものの、寄り道した図書館で証拠の入ったカバンを女子高生に取り違えられてしまう。彼女たちが向かったと思われる劇場にカバンを取り返しにいくのだが……。(「序幕」)

 新入社員と先輩コンビのドタバタストーリーを軸として、ある人気演出家の舞台周辺で起こる別々の4つの物語が次第につながっていくユーモアミステリー連作集。カバー裏には松尾と康子先輩のその後が描かれており楽しめること請け合い。

(KADOKAWA 1500円+税)

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