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「孤軍─越境捜査─」笹本稜平著

 犯人と彼らを追う捜査官との息詰まる攻防をさまざまな仕掛けと緻密な構成で描きながら、人間ドラマや恋愛などのサイドストーリーも充実した警察小説は、まさに小説界の王道中の王道。今週は、そんな読書の醍醐味をたっぷりと味わうことができる警察小説5冊を紹介する。



 警視庁捜査1課の刑事・鷺沼は、帰宅途中、尾行に気づく。しかし、相手の正体を突き止める前に、鷺沼の家を訪ねてきた神奈川県警の不良刑事・宮野に話しかけられ、逃がしてしまう。

 未解決事件の継続捜査を担当する鷺沼は、捜査に着手した6年前の強盗殺人事件と尾行との関係を疑う。殺されたのは独り暮らしの老人で、当時判明していた被害額は大したことはなかったが、聞き込みで、被害者には数億円のたんす預金があったという噂を聞いたのだ。調べを進めると、被害者の娘・恭子が事件後に再婚していることが判明。その再婚相手とは警視庁の首席監察官・村田だった。村田が事件に関与している可能性が高まる中、鷺沼に監察から呼び出しがかかる。

 組織の垣根を越えて、鷺沼と宮野が巨悪を追い詰める人気シリーズ最新刊。

(双葉社 1700円+税)

「冤罪犯」翔田寛著

 船橋署管内で女児の他殺体が発見され、同署捜査1課の香山らが捜査に乗り出す。遺体は首だけ通したTシャツだけ身につけ、上からブルーシートがかけられていた。

 捜査が難航する中、新米の女性捜査官・増岡は現場の状況が7年前の女児連続殺人事件と酷似していることに気づく。田宮事件と呼ばれたその事件では、裁判で無罪を主張した容疑者の田宮が死刑の判決後に拘置所内で自殺していた。増岡は模倣犯の可能性を訴えるが、当時、千葉中央署で田宮事件を担当した捜査1課係長の入江は一笑に付す。そんな中、被害者のTシャツの付着物が、田宮事件の現場で採取されたヌイグルミの毛と同一のものと断定される。

 7年前の事件は冤罪だったのか。乱歩賞受賞作家が正義を試された刑事たちを描く警察ミステリー。

(KADOKAWA 1600円+税)

「月夜に溺れる」長沢樹著

 仕事にも恋愛にも猪突猛進する霧生は、神奈川県警生活安全部に所属する警察官。それぞれ父親が違う子供が2人いて、長男の渉は元夫・遊佐と彼の再婚相手・直海と暮らし、前夫・伊地智との間にできた長女・紗霧は霧生が女手ひとつで育てている。

 ある日、霧生は県警で捜査支援を担当する遊佐の推薦でテレビ局の密着取材を受け、担当ディレクターの細川と意気投合し、番組放映後に交際が始まる。数カ月後、鶴見川の河川敷で女子高生の他殺体が見つかった。捜査を担当する伊地智に呼び出された霧生は、被害者の携帯電話の履歴に細川の名前があったことを教えられる。(「少しだけ想う、あなたを」)

 2人のエリート警察官を前夫に持つ霧生がその恋愛体質ゆえに事件に巻き込まれていく連作短編集。

(光文社 1700円+税)

「機龍警察狼眼殺手」月村了著

 横浜の高級中華料理店で5人が射殺される。犯人の狙いは、警視庁捜査2課がマークしていた香港系財閥グループの日本総代理店フォン・コーポレーションの情報企画室室長・程で、あとは巻き添えになったと思われた。

 捜査2課はフォンと経産省が進める世界初の実用大規模量子情報通信ネットワーク「クイアコン」プロジェクトにかかる疑惑を極秘捜査中だった。

 2課の課長・鳥居が庁内の別動組織・特捜部との合同捜査を要請、特捜部長・沖津の指揮で捜査が始まる。程の所持品にカトリックの護符が入った封筒があった。やがて数日前に起きた2件の殺人事件の被害者にも同じ護符が届いていたことが判明。一連の事件は連続殺人で、護符は殺害予告と思われた。

 2010年代最高のミステリーと称賛される人気警察小説シリーズ最新刊。

(早川書房 1900円+税)

「標的」真山仁著

 国民的人気を誇る厚労大臣の越村みやびは、悪徳業者がはびこり社会問題化しているサービス付き高齢者向け住宅の規制を強化する「社会福祉健全化法案」の成立に奔走。しかし、成立寸前に総理の黛の裁定で先送りされる。

 黛総理の任期が迫る中、みやびは国民が安住できる国を実現するために初の女性総理に名乗りを上げる。

 そんな中、片岡という男が東京地検特捜部にみやびを告発する。みやびが法案成立のために反対派議員に金をばらまき、その資金を用意したのが片岡がかつてCFO(最高財務責任者)をつとめていた医療・福祉系投資会社だというのだ。会社の代表はみやびの盟友の楽田だった。特捜検事の冨永は、同僚と片岡の聴取を担当するが……。

 ベストセラー「売国」シリーズ第2弾。

(文藝春秋 1750円+税)

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