著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「鍼灸日和」未上タニ著

公開日: 更新日:

 祖問大慶28歳、小太り丸顔の鍼灸師だ。この男、たとえばコンビニの雑誌売り場の前でガラの悪い男たちが床に座っていると「ちょっと邪魔なんだけど」と注意するのだ。男たちと揉め事になるなんて、まったく考えないのである。声をかけられた男のひとりが「うるせえチャーシュー」と悪態をつくと、今度は簡単にキレてしまう。

 ちなみに、小太りの祖問大慶が薄いピンクのTシャツを着ていたので、それが豚チックに見えること、さらには胸元に「PORK」という文字があることなどから(そういうTシャツを着るセンスもすごいが)、男が「チャーシュー」と呼んだわけだが、この小太り丸顔の鍼灸師は、「チャーシューってなんだよ」「これは豚の角煮でしょ!」と怒るのである。そこに怒るのかよ、と突っ込みたくなるところだ。さらに、強くもないのに「表に出ろ!」と言うんだから、わけがわからない。

 本書は、そのへんてこ鍼灸師が、さまざまな問題を抱えて身動きがとれなくなっている西川家にやってきて、彼らの体と心を癒やしてしまう物語だ。いや、正確にいうならば、へんてこ鍼灸師は西川家の問題をすべて解決するわけではない。それほど簡単に悩みや問題は解決しない。しかし、へんてこ鍼灸師の治療は西川家が変わるきっかけになる。

 この小太り丸顔の男に導かれるように西川家のみんなが壮絶な大喧嘩に突入するラストまで、一気読みの快作である。

(KADOKAWA 1400円+税)


【連載】北上次郎のこれが面白極上本だ!

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    オコエ瑠偉 行方不明報道→退団の真相「巨人内に応援する人間はいない」の辛辣

  2. 2

    ヤクルト青木宣親GMは大先輩にも遠慮なし “メジャー流”で池山新監督の組閣要望を突っぱねた

  3. 3

    矢沢永吉&松任谷由実に桑田佳祐との"共演"再現論…NHK紅白歌合戦「視聴率30%台死守」で浮上

  4. 4

    藤川阪神の日本シリーズ敗戦の内幕 「こんなチームでは勝てませんよ!」会議室で怒声が響いた

  5. 5

    清原和博 夜の「ご乱行」3連発(00年~05年)…キャンプ中の夜遊び、女遊び、無断外泊は恒例行事だった

  1. 6

    DeNA三浦監督まさかの退団劇の舞台裏 フロントの現場介入にウンザリ、「よく5年も我慢」の声

  2. 7

    Cocomiと男子バレー小川智大の結婚に立ちはだかる母・工藤静香の“壁” 「日の丸ブランド」認めるか?

  3. 8

    日本ハムが新庄監督の権限剥奪 フロント主導に逆戻りで有原航平・西川遥輝の獲得にも沈黙中

  4. 9

    未成年の少女を複数回自宅に呼び出していたSKY-HIの「年内活動辞退」に疑問噴出…「1週間もない」と関係者批判

  5. 10

    《浜辺美波がどけよ》日テレ「24時間テレビ」永瀬廉が国技館に現れたのは番組終盤でモヤモヤの声