著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「僕らだって扉くらい開けられる」行成薫著

公開日: 更新日:

 超能力者たちを描く連作集だ。ただし、超能力の持ち主は、その能力を手にしたことを喜んではいない。なぜなら、たとえば会社員の今村心司は1日1回だけ使える念動力(テレキネシス)を持っているが、触れなくても動かせるものは、自分の片手で持てる重さのものに限定され、しかも右方向に10センチ動かせるだけ。さらにあまり離れるとだめで、せいぜい2~3メートルくらいまで。念動力を使うときはかなり意識を集中させなければならないから結構面倒で、だったら歩いていって手で動かしたほうが早い。

 なにそれ、と思わず言いたくなる超能力だ。

 この設定からわかるように、作品のトーンはユーモラスで、そういうユーモア小説かと思っていると、発火能力(パイロキネシス)を持つ主婦亜希子の回で展開する「夫婦小説」のくだりや、読心術(マインド・リーディング)の能力を持つ元教師の回における運動会の回想などに、思わず感じ入ってしまうから、この作者、なかなかの才人だ。

 登場人物がクロスしながら進んでいくが、ラストは全員集合して、みんなが少しずつ力を合わせれば何事かが起きるという展開もいい。

 著者は2012年に「名も無き世界のエンドロール」で小説すばる新人賞を受賞してデビューした作家でまだ新人だが、これからが楽しみな作家のひとりだろう。

 (集英社 1600円+税)

【連載】北上次郎のこれが面白極上本だ!

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    TBS「ラヴィット!」の“テコ入れ”に不評の嵐! グダグダぶりを楽しむ独自性損失で視聴者離れ加速危機

  2. 2

    「おい、おまえ、生意気なんだよ」 野村監督は俺の挨拶を“ガン無視”、暴れたろうかと考えた

  3. 3

    「オールスター感謝祭」で“ブチギレ説教” …島崎和歌子は今や「第2の和田アキ子」の域

  4. 4

    NHK朝ドラ「風、薫る」巻き返しを阻む“最大のネック”…見上愛&上坂樹里Wヒロインでも苦戦中

  5. 5

    米国とイランが2週間の停戦合意も日本は存在感ゼロ…お粗末すぎた高市外交を識者「完全失敗」とバッサリ

  1. 6

    スピードスケート引退・高木美帆にオランダが舌なめずり “王国復権の切り札”として白羽の矢

  2. 7

    高市政権が非情の“病人切り捨て”強行で大炎上! 高額療養費見直し「患者の意向に沿う」は真っ赤なウソ

  3. 8

    ブチ切れ高市首相が「誤報だ!」連発 メディア、官邸、自民党内…渡る政界は「敵ばかり」の自業自得

  4. 9

    JFAは森保一氏の“囲い込み”に必死 W杯後の「次の日本代表監督」のウワサが聞こえない謎解き

  5. 10

    『エニイ・タイム・アット・オール』1964年のジョンのギターを聴くだけで元気が出る