「極夜行」角幡唯介著
妻の出産に立ち会った著者は、生まれたばかりの娘が子宮の暗闇から産道をくぐり抜けた瞬間、すべての人間が見るまばゆい究極の光を見たのだと思った。そして、イヌイットが住む極地は、太陽が地平線の下に沈んで4カ月も現れないことを知る。太陽が昇らない極夜の生活の後に彼らが見る本物の太陽を見たいと考えた。
暗闇に閉ざされた極夜の空間は、著者にとって未知の空間だった。娘が3歳になったとき、著者は北緯77度47分という超極北の村シオラパルクへ向かう。そして、犬1匹を連れて、太陽がなく月にコントロールされる極寒生活を体験した著者が見たものは……。
未知の世界を描く鮮烈なノンフィクション。(文藝春秋 1750円+税)