著者のコラム一覧
山下悠毅精神科医

ライフサポートクリニック院長。精神科専門医・精神保健指導医。令和1年12月、ライフサポートクリニック(東京都豊島区)を開設。「お薬だけに頼らない精神科医療」をモットーに、専門医による集団カウンセリングや極真空手を用いた運動療法などを実施している。大学時代より始めた極真空手では全日本選手権に7回出場。07年に開催された北米選手権では日本代表として出場し優勝。

(4)「チャレンジ依存症」という病気を理解することが不可欠

公開日: 更新日:

 これまで3回にわたって痴漢、盗撮の依存症について説明してきた。チャレンジ依存症から更生することが、いかに厄介なことか分かっただろう。ライフサポートクリニックの山下悠毅院長が説明する。

「できない仕組みを作るツールには、『THE TPO(ザ・ティーピーオー)』のあぶり出しが大切です。Tはツール=問題行動につながる道具、Hはヒューマン=問題行動を呼び起こす対象人物、Eはエモーション=問題行動の手前にある自らの感情、Tはタイム=問題行動をしたくなるタイミング、Pはプレース=問題行動を行う場所、Oはアザー=その他、自分の中で渇望の誘因になる要因です」(山下院長=以下同)

 例えば、盗撮であれば、Tはスマートフォンのカメラや無音アプリ、Hはスカートの女性、Eは退屈な気分、Tは通勤時、Pは駅構内という具合だ。このように、問題行動を働かせる環境や理由があるからこそ、当人は「やりたくなる」。裏を返せば、こうした環境をつくらないようにすれば、問題行為は起こりづらくなる。

「依存症は自制心でどうこうできる病態ではないということ。論理的にアプローチしないと治りません。これは、当事者の家族の方も理解しなくてはいけません。感情的に説教したり怒っても、問題行動は治らない。先に説明したような治療を繰り返していくことで、“問題行動ができない仕組み”を守れて自分に自信が持てます。自信ができれば、わざわざ逮捕されるかもしれない無価値なチャレンジに身を投じることもなくなります。回復とは、“何かを成し遂げた状態”ではなく、“『自分はやめ続けることができる』と信じることができ、そう信じている自分のことを誇らしく思える状態”のことなのです」

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    有本香さんは「ロボット」 どんな話題でも時間通りに話をまとめてキッチリ終わらせる

  2. 2

    【広陵OB】今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  3. 3

    NHK「昭和16年夏の敗戦」は見ごたえあり 今年は戦争特別番組が盛りだくさん

  4. 4

    市船橋(千葉)海上監督に聞く「高校完全無償化で公立校の受難はますます加速しませんか?」

  5. 5

    綾瀬はるか3年ぶり主演ドラマ「ひとりでしにたい」“不発”で迎えた曲がり角…女優として今後どうする?

  1. 6

    プロ志望の健大高崎・佐藤龍月が左肘手術経てカムバック「下位指名でものし上がる覚悟」

  2. 7

    中山美穂「香典トラブル」で図らずも露呈した「妹・忍」をめぐる“芸能界のドンの圧力”

  3. 8

    石破首相が「企業・団体献金」見直しで豹変したウラ…独断で立憲との協議に自民党内から反発

  4. 9

    長渕剛がイベント会社に破産申し立て…相次ぐ不運とトラブル相手の元女優アカウント削除で心配な近況

  5. 10

    ドジャース佐々木朗希“ゴリ押し”ローテ復帰が生む火種…弾き出される投手は堪ったもんじゃない