「貧困の戦後史」岩田正美著

公開日: 更新日:

 貧困には「かたち」がある、というのが著者の考え方だ。時代によって、地域によって特色があるという。

 たとえば敗戦直後は、食べるものすらないというかたち。戦争で生み出された浮浪者、浮浪児たちは「かりこみ」によって強制収容され、その一部は炭鉱労働者として送り出される。また旧満州の開拓者や軍人は帰国後、国内開拓民として僻地に追いやられ、酪農家として借金に苦しむ。それが後の海外移住を促進する政策につながる。

 また、高度成長期の大衆消費社会の実現が、多重債務問題を引き起こし、バブル崩壊後、ホームレスを誕生させることにつながった。

 貧困の問題を個人の自立に偏りさせ過ぎることを問題視し、住宅手当の支給、こどもの養育費用の支援、福祉貸し付けの充実などを提案する。(筑摩書房 1800円+税)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  2. 2

    国分太一問題で日テレの「城島&松岡に謝罪」に関係者が抱いた“違和感”

  3. 3

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  4. 4

    片山さつき財務相の居直り開催を逆手に…高市首相「大臣規範」見直しで“パーティー解禁”の支離滅裂

  5. 5

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  1. 6

    小林薫&玉置浩二による唯一無二のハーモニー

  2. 7

    森田望智は苦節15年の苦労人 “ワキ毛の女王”経てブレーク…アラサーで「朝ドラ女優」抜擢のワケ

  3. 8

    臨時国会きょう閉会…維新「改革のセンターピン」定数削減頓挫、連立の“絶対条件”総崩れで手柄ゼロ

  4. 9

    阪神・佐藤輝明をドジャースが「囲い込み」か…山本由伸や朗希と関係深い広告代理店の影も見え隠れ

  5. 10

    阪神・才木浩人が今オフメジャー行きに球団「NO」で…佐藤輝明の来オフ米挑戦に大きな暗雲