著者のコラム一覧
坂爪真吾

「新しい性の公共」を目指し、重度身体障害者への射精介助サービスや各種討論会を開く一般社団法人ホワイトハンズ代表理事。著書に「男子の貞操」(ちくま新書)、「はじめての不倫学」(光文社新書)など。

「同性愛は罪」は聖書のひとつの解釈

公開日: 更新日:

「あなたが気づかないだけで神様もゲイもいつもあなたのそばにいる」平良愛香著/Gakken1300円

 この数年間で、「LGBT」というフレーズが社会のさまざまな場面で広く用いられるようになった。その半面、性的マイノリティーに対する社会的な偏見や差別はまだまだ根強く残っている。LGBTに関するニュースがメディアで頻繁に報道されるようになった一方で、「LGBTの人には会ったことがない」「自分の周りには一人もいない」と考えている人も多いだろう。

 もしかしたらあなたも、LGBTの人たち=怖い、近寄りがたい、うかつなことを言うと怒られる、というネガティブなイメージを持っているかもしれない。

 そんなあなたにおすすめしたいのが本書である。沖縄出身の著者は、日本で初めてゲイであることを公表して牧師となった。同性愛者であるという自覚と「同性愛は罪」とするキリスト教の教えのはざまで苦しみながら、そして家族や友人、教会関係者に対するカミングアウトに伴う艱難辛苦を乗り越えながら、自分や他者と真摯に向き合い、「神はすべての人を愛する」という確信に至るまでの半生が赤裸々につづられている。

 マイノリティーや被差別者の語りにありがちな、誰かや何かを加害者認定して叩くような表現は一切なく、全編を通じて優しさと慈愛に満ちたトーンで書かれている。著者の人柄が伝わってくるようだ。同性愛者でなくても、著者の語りは心に響くだろう。「性と差別にまつわる特別講義」も収録されているので、LGBTの入門書としても読むことができる。

「同性愛は罪」というのはあくまで聖書の解釈にすぎず、永久不変の真理ではない。「キリスト教は今も成長途上であり、これからも変わり続ける宗教なのだ」という著者の視点には、学ぶところが多い。

 キリスト教が変化するものであると同様に、私たちの社会も絶えず変化する。異性を愛する人であろうと、同性を愛する人であろうと、全ての人が祝福される社会をつくるための示唆に満ちた一冊である。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    安青錦は大関昇進も“課題”クリアできず…「手で受けるだけ」の立ち合いに厳しい指摘

  2. 2

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  3. 3

    マエケン楽天入り最有力…“本命”だった巨人はフラれて万々歳? OB投手も「獲得失敗がプラスになる」

  4. 4

    中日FA柳に続きマエケンにも逃げられ…苦境の巨人にまさかの菅野智之“出戻り復帰”が浮上

  5. 5

    今田美桜に襲い掛かった「3億円トラブル」報道で“CM女王”消滅…女優業へのダメージも避けられず

  1. 6

    高市政権の“軍拡シナリオ”に綻び…トランプ大統領との電話会談で露呈した「米国の本音」

  2. 7

    エジプト考古学者・吉村作治さんは5年間の車椅子生活を経て…80歳の現在も情熱を失わず

  3. 8

    日中対立激化招いた高市外交に漂う“食傷ムード”…海外の有力メディアから懸念や皮肉が続々と

  4. 9

    安青錦の大関昇進めぐり「賛成」「反対」真っ二つ…苦手の横綱・大の里に善戦したと思いきや

  5. 10

    石破前首相も参戦で「おこめ券」批判拡大…届くのは春以降、米価下落ならありがたみゼロ