「消された信仰」広野真嗣著

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 東シナ海に浮かぶ「生月島」。隠れキリシタン信仰が現在も守られている最後のエリアで、本来なら世界遺産としてスポットライトがあてられてしかるべきなのに、なぜか日本政府からも長崎県からもその存在を無視されている、というより意図的に消されようとしている。

 その理由をたどって何度も島に足を運んだ先に見えてきたものは、厳しい禁教令ゆえにその信仰を「音(口伝)で伝える伝統(オラショ)」があり、しかも宣教師不在の間にその言葉の意味も不確かになってしまった信徒の姿があった。

 しかも現在のカトリックからはキリスト教とは別物とまで断じられている。しかし、オラショに節をつけた歌オラショの原型が中世イベリア半島で歌われていたグレゴリオ聖歌にあり、それが時を経て現代に残っているのはまさに奇跡で、変節してしまったのはカトリックのほうだったのだ。

 カトリック史のタブーに迫った第24回小学館ノンフィクション大賞受賞作。

(小学館 1500円+税)


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