「闇市」マイク・モラスキー編
戦争末期から終戦直後の闇市、闇経済をテーマにしたアンソロジー。
作家の十吉は、自他ともに認めるヘビースモーカー。しかし、たばこの配給は1日3本しかなく、家に出入りする愛読者の君代が闇市で調達してくるたばこに頼っていた。君代はたばこだけでなくさまざまな品を調達して、十吉の家に持参する。
一方、作家志望の関口が作品を見て欲しいと十吉の家に通い始める。戦争が終わり3カ月後、久しぶりに関口が訪ねてきた。文学をやめ闇屋になったという関口の話から、十吉は自分が相場よりも高い値で君代からたばこを買っていたことに気づく。(織田作之助著「訪問客」)
その他、人の手から手へと渡る100円札を語り手にした太宰治の「貨幣」など11編を収録。
(新潮社 670円+税)