「夜を乗り越える」又吉直樹著

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 なぜ本を読むのか。なぜ文章を書くのか。「火花」はどのようにして生まれたのか。幼いころにまでさかのぼり、自身の文学体験を語り尽くした本。作家又吉直樹は生まれるべくして生まれたのだと納得する。

 勉強はできなかったが、国語だけは苦手意識がなかった。教科書に載っている詩や小説を勝手に先回りして読むのが好きだった。

 中学1年のとき芥川龍之介の「トロッコ」を、2年のとき太宰治の「人間失格」を読んで、近代文学にはまった。自分の中にある不安や異常と思われることが、小説として言語化されている。しょうもないことも書いてある。「こんなことを考えてもいいんだ」と思った。

 以来、半端ではない読書経験を積んできた。芥川、太宰をはじめ、漱石、谷崎、織田作之助。現代の作家では、古井由吉、町田康、西加奈子、中村文則など。好きな作家や好きな作品を語る口調には、「読んでほしい!」という熱がこもる。

 本は賢い人たちのためだけにあるものではない。むしろ、本なんて必要ないと思っているパンクスや芸人のほうが、「めちゃくちゃ相性がいい」のではないか。

 小説に救われ、夜を乗り越えてきた人の、心底からの読書のすすめは、本を読まない人にも刺さりそうだ。(小学館 820円+税)

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