「学校では教えてくれない世界史の授業」佐藤賢一著

公開日: 更新日:

 このところ「世界史」に関連する本をよく目にする。政治・経済・文化その他、あらゆる場面でグローバル化が進み、いや応なく世界に組み込まれている現状の表れだろうか。ともあれ、よく考えてみると「世界史」というのはわかったようでわからない言葉だ。例えば、西洋史、東洋史、アフリカ史といった地域史を「連関のある統一的全体」として束ねれば世界史になるのか? どうもイメージしにくい。

 本書で語られる「世界史」は、「ユニバーサル・ヒストリー」である。一般的には「普遍史」と訳されるが、著者はその原義に立ち返り、「1つに(ユニ=ウニ)向けられた(バーサル=ウェルスス)」歴史を世界史とする。つまり、他を征服、一元的に支配して、自分以外のものを認めない歴史、換言すれば「自らが世界史になろうとしている歴史」だ。それを体現したのがアレクサンドロス大王の帝国、東西ローマ帝国、イスラム帝国、モンゴル帝国という5つの帝国だ。

 アレクサンドロスに始まる世界征服・統一の試みはローマ帝国に引き継がれるが、やがてローマは西のフランク王国を中心とする「西世界」と、コンスタンティノポリスを中心にした「東世界」に分裂。その間隙を縫うようにイスラム帝国が勃興し版図を広げ、広大な「イスラム世界」を形成する。その3つの世界を襲ったのがモンゴル帝国で、その衝撃によりイスラム世界はアジア、アフリカへ進出し、西世界は国民国家を生み、東世界はコンスタンティノポリスからロシアへと中心を移す――。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    西武フロントの致命的欠陥…功労者の引き留めベタ、補強すら空振り連発の悲惨

    西武フロントの致命的欠陥…功労者の引き留めベタ、補強すら空振り連発の悲惨

  2. 2
    西武の単独最下位は誰のせい? 若手野手の惨状に「松井監督は二軍で誰を育てた?」の痛烈批判

    西武の単独最下位は誰のせい? 若手野手の惨状に「松井監督は二軍で誰を育てた?」の痛烈批判

  3. 3
    巨人・小林誠司の先制決勝適時打を生んだ「死に物狂い」なLINE自撮り動画

    巨人・小林誠司の先制決勝適時打を生んだ「死に物狂い」なLINE自撮り動画

  4. 4
    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

  5. 5
    花巻東時代は食トレに苦戦、残した弁当を放置してカビだらけにしたことも

    花巻東時代は食トレに苦戦、残した弁当を放置してカビだらけにしたことも

  1. 6
    日本ハムは過去2年より期待できそう 新外国人レイエスが見せつけた恐るべきパワー

    日本ハムは過去2年より期待できそう 新外国人レイエスが見せつけた恐るべきパワー

  2. 7
    大谷はアスリートだった両親の元、「ずいぶんしっかりした顔つき」で産まれてきた

    大谷はアスリートだった両親の元、「ずいぶんしっかりした顔つき」で産まれてきた

  3. 8
    【中日編】立浪監督が「秘密兵器」に挙げた意外な名前

    【中日編】立浪監督が「秘密兵器」に挙げた意外な名前

  4. 9
    WBCの試合後でも大谷が227キロのバーベルを軽々と持ち上げる姿にヌートバーは舌を巻いた

    WBCの試合後でも大谷が227キロのバーベルを軽々と持ち上げる姿にヌートバーは舌を巻いた

  5. 10
    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗

    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗