「鳥!驚異の知能」ジェニファー・アッカーマン著 鍛原多惠子訳

公開日: 更新日:

 英語の鳥頭(bird brain)は、愚かな人、間抜けな人、落ち着きのない人を指すそうだが、日本でも「鶏は三歩歩くと忘れる」ということわざがあるように、鳥は脳が小さく、賢くないというのが万国共通したイメージのようだ。ところが近年の研究では、人類独自の能力と思われていた各種の能力――道具づくり、推論、過去を記憶して未来について考える、相手の視点からものを見る、相互に学び合う――が鳥類にも見られることが明らかにされている。人類とはまったく異なった進化の過程を経た鳥類がなぜそうした能力を獲得し得たのか。本書は、豊富なフィールドワークの成果をもとに、鳥たちの驚くべき能力を紹介している。

 世界一賢い鳥といわれる、カレドニアガラスの「007」は、餌を取るのに必要な別の道具を手に入れるために道具を使う。これは「道具のメタ使用」といって、この行為はこれまで人類と大型霊長類でしか観察されたことがなかったのだが、この007には、道具の使い道に関する抽象的な理解があることを示唆している。

 また、音を模倣し、音響的な情報を収集し、自分の声で再生するという言語に不可欠な能力を有するのは、オウム・インコ類、ハチドリ、鳴禽(めいきん)、ミツスイといった鳥類の他、数種の海洋哺乳類(クジラやイルカ)、コウモリ、そしてヒトだけである。この能力を持つ鳥類は予想以上のコミュニケーション能力を有しており、鳥のさえずりと話し言葉の類似性が注目されている。

 本書に描かれる鳥たちの知能には瞠目させられる。かつて、サルとヒトとの立場が逆転する未来世界を描いた「猿の惑星」というSF小説(同名映画も)があったが、近い将来、「鳥の惑星」という作品が登場するかもしれない。

 <狸>

(講談社 1300円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    世良公則氏やラサール石井氏らが“古希目前”で参院選出馬のナゼ…カネと名誉よりも大きな「ある理由」

  2. 2

    国分太一が社長「TOKIO-BA」に和牛巨額詐欺事件の跡地疑惑…東京ドーム2個分で廃墟化危機

  3. 3

    浜田省吾が吉田拓郎のバックバンド時代にやらかしたシンバル転倒事件

  4. 4

    “お荷物”佐々木朗希のマイナー落ちはド軍にとっても“好都合”の理由とは?

  5. 5

    「いま本当にすごい子役」2位 小林麻央×市川団十郎白猿の愛娘・堀越麗禾“本格女優”のポテンシャル

  1. 6

    幼稚舎ではなく中等部から慶応に入った芦田愛菜の賢すぎる選択…「マルモ」で多忙だった小学生時代

  2. 7

    「徹子の部屋」「オールナイトニッポン」に出演…三笠宮家の彬子女王が皇室史を変えたワケ

  3. 8

    TOKIO解散劇のウラでリーダー城島茂の「キナ臭い話」に再注目も真相は闇の中へ…

  4. 9

    新横綱・大の里の筆頭対抗馬は“あの力士”…過去戦績は6勝2敗、幕内の土俵で唯一勝ち越し

  5. 10

    フジテレビ系「不思議体験ファイル」で7月5日大災難説“あおり過ぎ”で視聴者から苦情殺到