「ヒトがいまあるのはウイルスのおかげ!」武村政春著

公開日: 更新日:

 インフルエンザが大流行している。原因はいわずもがな、インフルエンザウイルスへの感染だが、なぜこれほどまでに猛威を振るうのか。そもそも、ウイルスとは何なのだろうか。

 その答えを教えてくれるのが、武村政春著「ヒトがいまあるのはウイルスのおかげ!」(さくら舎 1500円+税)である。ウイルスといえば病気の原因というイメージが強く、何とも不思議なタイトルだが、本書ではウイルス研究の第一人者が、ウイルスの生態を余すところなく紹介している。

 ウイルスは「生物」と「物質」の隙間的な存在だ。生物は脂質でできた膜に包まれた細胞でできており、外界から取り入れた物質でエネルギーをつくる代謝の仕組みと、自分と同じ仲間を増やす自己複製の機能もある。ところが、ウイルスにはこうした仕組みがない。細胞を持たず、代謝を行わず、自己複製もできない。それでは、なぜインフルエンザのような重い症状が表れるのか。ウイルスとは、遺伝子となるDNAあるいはRNAが、タンパク質でできたカプシドという殻で包まれた単純な構造でできている。そして細胞内に入り込むと、自身の殻を壊して遺伝子の元を放出。すると細胞は、ウイルスをせっせと複製するウイルス工場となってしまう。1個のウイルスでも、24時間後には100万個になるという爆増ぶりだ。

 麻疹や肝炎、エイズなど、恐ろしい病気の原因となるウイルスだが、実は近年、人間の胎盤やヒトゲノムは、太古の昔にウイルス感染して変異し、できあがったものであるという研究報告がある。さらに本書では、かつて生物だったとみられる新たなウイルスについても解説している。果たしてウイルスは、敵なのか味方なのか?

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    大手家電量販店の創業家がトップに君臨する功罪…ビック、ノジマに続きヨドバシも下請法違反

  3. 3

    落合監督は投手起用に一切ノータッチ。全面的に任せられたオレはやりがいと緊張感があった

  4. 4

    自民党総裁選の“本命”小泉進次郎氏に「不出馬説」が流れた背景

  5. 5

    「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は

  1. 6

    今思えばあの時から…落合博満さんが“秘密主義”になったワケ

  2. 7

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性

  3. 8

    三谷幸喜がスポーツ強豪校だった世田谷学園を選んだワケ 4年前に理系コースを新設した進学校

  4. 9

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  5. 10

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋