「『社会分裂』に向かうフランス」尾上修悟著

公開日: 更新日:

 今、日本人が関心を寄せるフランスの話題といえば日産とルノーの問題だが、フランス国内はそれどころではない。燃料税の引き上げに端を発したマクロン政権に対する抗議デモが全土に広がり、参加者は推定8万人を突破。パリでは警官隊が放水銃や催涙ガスで応戦する事態にまで発展している。

 尾上修悟著「『社会分裂』に向かうフランス」(明石書店 2800円+税)では、政治不信により国内の社会階層間の対立が深まるフランスの今を分析している。

 フランスの有権者はサルコジ政権に失望し、大きな期待を込めて次の大統領にオランド氏を選んだ。彼が選挙キャンペーン中に強調したのは成長復帰であり、ユーロ圏の方針とは逆の財政緩和政策だった。ところが、政権がスタートするや採った政策はサルコジ氏同様の緊縮政策。これにより、景気後退のスパイラルが起きてしまった。サルコジ政権下では、緊縮政策により公的赤字を対GDP比で4ポイント以上削減するという効果があった。しかし一方では、これが成長低下の一大要因となった。それにもかかわらずオランド氏は緊縮政策を採り、個人間及び地域間の格差をますます拡大させてしまった。

 2017年5月、国民に寄り添う姿勢を色濃く示したマクロン氏が大統領に選出された。しかし、またも国民の期待は裏切られ、格差の拡大により社会分断が加速。今やマクロン氏の支持率は歴代大統領最低だ。最新の世論調査によると、フランスの若者の約5割が民主主義以外のシステムを望んでいるという。この層には、近年の政権下で社会的に排除された弱者が数多く見いだせる。

 政治不信が生み出す社会分裂。日本にとっても他人事ではない。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    嵐ラストで「500億円ボロ儲け」でも“びた一文払われない”性被害者も…藤島ジュリー景子氏に問われる責任問題

  2. 2

    トリプル安で評価一変「サナエノリスク」に…為替への口先介入も一時しのぎ、“日本売り”は止まらない

  3. 3

    27年度前期朝ドラ「巡るスワン」ヒロインに森田望智 役作りで腋毛を生やし…体当たりの演技の評判と恋の噂

  4. 4

    今田美桜に襲い掛かった「3億円トラブル」報道で“CM女王”消滅…女優業へのダメージも避けられず

  5. 5

    安青錦の大関昇進めぐり「賛成」「反対」真っ二つ…苦手の横綱・大の里に善戦したと思いきや

  1. 6

    元TOKIO松岡昌宏に「STARTO退所→独立」報道も…1人残されたリーダー城島茂の人望が話題になるワケ

  2. 7

    今田美桜が"あんぱん疲れ"で目黒蓮の二の舞いになる懸念…超過酷な朝ドラヒロインのスケジュール

  3. 8

    織田裕二「踊る大捜査線」復活までのドタバタ劇…ようやく製作発表も、公開が2年後になったワケ

  4. 9

    「嵐」が2019年以来の大トリか…放送開始100年「NHK紅白歌合戦」めぐる“ライバルグループ”の名前

  5. 10

    実は失言じゃなかった? 「おじいさんにトドメ」発言のtimelesz篠塚大輝に集まった意外な賛辞