「父と私の桜尾通り商店街」今村夏子著
ゆうこの家は桜尾通り商店街の出口のところでパン屋をやっている。母は、ゆうこが3歳のときに、振興組合の理事長と駆け落ちした。
それ以来、父は組合から抜けて、商店街の行事にも参加しなくなった。商店街の子供たちに店の悪口を言いふらされ、ゆうこは商店街を歩けなくなる。去年のクリスマスに、父が店をたたんで実家に帰ると言い出した。買い込んである小麦粉やバターなどを使い果たすまでの、店じまいまでのカウントダウン営業が始まる。棚に並べるパンの種類が減っていき、コッペパンしか並ばなくなった頃、一人の女性客がやってきた。(表題作)
うまくかみ合わない日常生活の中で生きる、不器用な人たちの6編の物語。
(KADOKAWA 1400円+税)