「東京の子」藤井太洋著

公開日: 更新日:

 物語の舞台は、2023年の東京。オリンピック後の東京は、人口減を補うために受け入れた外国人労働者であふれていた。失踪する労働者も後を絶たず、彼らを連れ戻す仕事を請け負っているのが主人公の舟津怜だ。

 子ども時代に保護施設で暮らしていた舟津は、施設を出た後に酷い親に捕まらないよう、15歳のときに戸籍を買い、仮部諫牟という偽名で暮らしつつ、その際世話になった大熊に仕事を紹介してもらっていたのだ。

 そんなある日、彼はオリンピック跡地にできた、働きながら学べる大学校「東京デュアル」の料理店スタッフであるベトナム人のファム・チ=リンの捜索を依頼される。行方を突き止めた舟津は、就職先も斡旋してもらえる上に奨学金サポートもあるという触れ込みの「東京デュアル」の本当の姿を、彼女が告発しようとしていることを知るのだが……。

 スマホで執筆した小説「Gene Mapper」がKindle小説売り上げ第1位になったことをきっかけに、小説家に転身した元エンジニアによる近未来小説。

 昨今の社会情勢の先に何が待っているのか、数年後の日本を予見したかのような小説となっている。

(KADOKAWA 1600円+税)

【連載】ベストセラー読みどころ

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日本は強い国か…「障害者年金」を半分に減額とは

  2. 2

    SBI新生銀が「貯金量107兆円」のJAグループマネーにリーチ…農林中金と資本提携し再上場へ

  3. 3

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  4. 4

    「おこめ券」でJAはボロ儲け? 国民から「いらない!」とブーイングでも鈴木農相が執着するワケ

  5. 5

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  1. 6

    侍Jで加速する「チーム大谷」…国内組で浮上する“後方支援”要員の投打ベテラン

  2. 7

    石破前首相も参戦で「おこめ券」批判拡大…届くのは春以降、米価下落ならありがたみゼロ

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    高市政権の物価高対策「自治体が自由に使える=丸投げ」に大ブーイング…ネットでも「おこめ券はいらない!」